茶は世界中で多様な方法で加工されて飲用、食材として使用される。茶にはポリフェノールである茶カテキンが多く含まれており、これが抗酸化作用を持つ物質として注目されている。本研究の目的は、緑茶カテキンがもたらす血管への作用の解明と設定し、以下の実験を行った。 1.緑茶に含まれる(-)-epigallocatechin-3-gallate (EGCG)を使用して、その血管内皮機能に対する影響について検討した。以前の研究で、EGCGが血管内皮細胞(HUVEC)に及ぼす作用として、一酸化窒素(NO)の産生亢進を報告している。本研究では、血管新生、リモデリングに関与するTGF-beta/BMPシグナルへの影響を検討した。BMP-9刺激によりHUVEC細胞は活性化されるが、そのシグナル分子smad1/5のリン酸化がEGCG添加により増強することを見出した。このシグナル系の下流分子についての検討を継続して行っている。 2.EGCGが血管内皮細胞に及ぼす影響を、マイクロRNAの変化として捉えることが可能か、検討した。血管機能に重要なマイクロRNAを抽出し、特に血管内皮細胞特異的なmiRNA-126を中心に検討した。また、EGCGはTNF-alpha刺激によるVCAM-1の発現を制御する可能性が確認できた。このことは、EGCGの血管炎症を制御する効果が期待できることを示している。 いずれも、コロナ禍の一年間で行った研究の一端で研究時間不足のために、血管の老化についての研究は断片的であり、一連の結果は得られなかった。また、得られた結果についてはさらなる実験による結果の再現を確認する必要があるが、現時点ではカテキンの抗炎症作用、血管リモデリング作用の可能性を示すことができ、今後の老化研究の一助となると確信する。
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