認知症疾患の診療において,認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の段階で診断し,治療開始することが望まれているが,近年MCI者の中に発達障害者に加齢性の認知機能低下が加わった状態の人が混在している可能性が指摘されている。本研究では,認知症によるMCIと発達障害によるMCIとを簡便に鑑別できる方法の確立を目的とした。その結果,認知機能評価の平均値での有意な差は認められたが,判別分析では有意な有効性は認められなかった。認知機能評価の中でも記憶を測定するWMS-Rの下位検査において群間差が示され,WMS-Rは認知症によるMCIと発達障害によるMCIとを鑑別しうる検査になる可能性が考えられた。
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