本研究では、四肢の筋力低下を主症状とする筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対し、装着型ロボットスーツHAL(CYBERDYNE社製)を用いた下肢サイバニック訓練を実施した。ALSに対する高負荷の運動は筋力低下を招くことが懸念されており、リハビリテーション(リハビリ)においては適切な負荷量の調整が必須である。HALは下肢に対する運動の負荷量の調整が可能となるため、HALを用いたリハビリは下肢への負荷量を軽減し、筋力維持、歩行能力の改善効果が期待されている。しかし、呼吸機能に対する影響の報告は散見されていない。そのため、本研究の目的を、HALを用いた訓練が対象者の身体機能と呼吸機能に及ぼす効果を解明とした。 対象者は歩行可能であるALS患者とし、HALを装着しトレッドミルを用いた訓練(訓練時間は休憩を含み30分程度)を全9回実施した。トレッドミルの歩行速度・運動実施時間は、対象者の疲労、呼吸状態などの自覚症状をもとに設定し、全9回、同一の設定となるよう配慮した。 訓練の開始前・終了後で2分間歩行距離、10m歩行速度、大腿・下腿周径、下肢筋力(膝伸展筋力)、ALS機能評価スケール、呼吸機能(%肺活量、%努力性肺活量)、吸気筋力、呼気筋力、最大強制吸気量、咳のピークフロー、ADL(Barthel Index、Function Independence Measure)、QOL(PRO:患者自身による主観的評価)を評価した。 全13名の対象者に対して訓練が実施でき、訓練前後における評価結果を比較検討した。結果、2分間歩行距離、PROで有意な改善を認めた(P<0.05)が、呼吸機能を含めたその他の評価項目では有意差を認めなかった。
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