心疾患患者は高齢者が多くを占め,心臓カヘキシアに起因するサルコペニアを有しやすく,フレイルを有する者も多い.加圧トレーニングは,低強度トレーニングでも筋力増強効果が期待できる方法であるため,高強度トレーニングの実施が困難な高齢心疾患患者でも筋力向上を狙える有用な方法であると考えられる.一方で心疾患患者へ臨床応用をするには心血管反応への科学的安全性が不十分という懸念があった.本研究では,加圧トレーニングを臨床応用するために呼吸循環動態について検討し,安全性について確認することを目的とした. 健常若年者に対しては,軽負荷(推定1RMの20%)加圧あり/なし,高負荷(推定1RMの60%)加圧なしの3条件でレッグエクステンション運動中(15回×3セット)の呼吸循環動態を呼気ガス分析装置(AE-100i,ミナト医科学株式会社),非侵襲インピータンス式心拍出量計(Physio Flow Q-LinkTM,Maanatec)と主観的運動強度(RPE)をBorg scaleにて検討した(研究1).また,健常若年者と高齢心疾患患者の比較では,軽負荷(推定1RMの20%)加圧あり/なしの2条件で呼吸循環動態とPREを比較した(研究2). 研究1より,軽負荷加圧トレーニングは,高負荷加圧なしよりもMETsや心拍出量(SV)など呼吸循環動態の変化が小さく,RPEが低かったことから主観的負担の少ないトレーニングであった.研究2より,高齢心疾患患者に対する加圧トレーニングは,通常のトレーニングよりも下肢の疲労感に対するRPEは強くなるが,呼吸循環動態には差を認めなかった.軽負荷加圧トレーニングは,高齢心疾患患者においても安全に実施できるが,臨床応用する際には疲労を与えやすいため,加圧の設定圧や対象者の運動歴,アドヒアランスに留意する必要があることが示唆された.
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