【研究目的】高齢化の進行に伴い、変形性膝関節症患者が増加している。重度の変形性膝関節症に対する手術療法は人工膝関節全置換術(TKA)が一般に選択されるが、術後は一時的に膝筋力や歩行能力の低下が生じるためリハビリテーションが必要となる。近年ではTKA術後の在院日数が減少傾向にあり、患者は十分な歩行能力や膝機能を得る前に退院することも多い。そのため、術後早期より効率的に歩行能力や日常生活動作を改善する介入を確立することが望まれる。本研究では、TKA 後患者に Honda 歩行アシストを用いた歩行練習(HWAT)を行い、従来法と比較することで、その安全性と有効性を明らかにすることを目的とした。 【研究手法】TKA 実施目的で当院に入院した変形性膝関節症の患者(10名,11膝)を対象としHWAT (HWATを含む理学療法提供量は対照群と同等とした)を実施した。評価項目は①歩行能力、②膝関節の筋力、③関節可動域、④膝関節症状由来の疼痛及び生活状況、⑤有害事象の有無とした。これらの項目を術後定期的に評価し、通常の理学療法のみを実施した対象群(11名,11膝)と比較した。 【研究成果】HWAT中に重大な有害事象は生じず、TKA術後患者に対して安全に使用できることを確認した。HWAT実施群と対照群で術後歩行能力の推移を比較すると、対照群では術後2週時点において術前よりも歩行速度が低値となったが、HWAT群では術前と同程度の歩行速度を保っていた。また、HWAT実施群では術後8週時点において対照群と比較してより高い動作能力を示していた。関節可動域、膝筋力については対照群と同程度の改善を示した。以上より、HWATによるTKA術後早期の歩行能力・身体機能改善に寄与する可能性が示唆され、効果的なリハビリテーションツールであることが明らかとなった。
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