研究課題/領域番号 |
20H01187
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳橋 博之 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (70220192)
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研究分担者 |
近藤 洋平 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 研究員 (20634140)
菊地 達也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (40383385)
井上 貴恵 明治大学, 文学部, 専任講師 (70845255)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イスラーム法 / 預言者伝承 / シーア派 / 異端 / スーフィズム / イバード派 / ハワーリジュ派 |
研究実績の概要 |
本研究計画は、前近代イスラームにおける様々な組織を多角的に考察することを目指している。令和3年度においては、各分担者がそれぞれの担当分について研究を遂行した。 柳橋は、「ムフリムの婚姻と終身贈与をめぐる学説とハディースの間の対応関係について」において、スンナ派の伝承家の集団としての特徴を探るため、法学ハディースの異本生成の過程を分析した。菊地はシーア派諸派の組織を担当しているが、『ドゥルーズ派の誕生』を上梓した。本研究計画との関連では、ここで、シーア派のなかでも異端とされるドゥルーズ派が成立し組織を形成していく過程を、思想史的展開と政治事情の両側面から考察した。井上は、スーフィー教団の形成を思想の面から考察しており、その一端としてスルタン・ヴァラド『マアーリフ』の翻訳に取り組み、その一部を『イスラム思想研究』に発表した。また同時に、やはり思想史的な観点から師資相承の態様について調査を行っている最中である。近藤は、イバード派の思想及び組織論に関する研究を推し進めており、その成果を英文による2本の論文(「オマーンのイバード派における知識の伝播」と「共通の素地を作ること:破棄に関するイバード派の理論」)として発表した。これらの研究は、組織を、地位や役職のような目に見える形で扱うというよりは、ある特定の思想や学説によって結び付けられる緩やかな集団として扱おうという傾向を有し、本研究計画の中核部分を形作っているといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各分担者は、それぞれの担当する主題に関連する成果を論文や単行本の形で公表するか、または投稿中である。またその内容も、前近代イスラーム圏における組織の形成やその維持の在り方を、どちらかといえば教義の面に重点を置いて考察するという本研究計画の趣旨に沿ったものになっている。
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今後の研究の推進方策 |
今令和4年度は、研究プロジェクトの最終年度に当たるため、各自が担当する分野において研究を深化させる一方で、取りまとめを行うことになる。柳橋は、引き続き伝承家という組織の体をなすかなさないかの境界にある集団を取り上げるが、預言者伝承のイスナード(伝達履歴)を計量的に分析することにより、預言者伝承がイスラーム世界の主要部分において共通の知識となった時期を推定する作業を行う。菊地は、シーア派の分派であるイスマーイール派やドゥルーズ派の指導者から信徒に宛てられた書簡の分析を進める。井上は、初期スーフィズムの思想形成の過程を、師資相承という側面と関連付けながら考察する。近藤は、中世イスラーム世界各地に展開したイバード派が、多数派たるスンナ派との対峙のなかでいかにして共同体内部の組織化を図ったかという点を中心に考察を進める。 各研究分担者の研究がある程度進んだ時点で、複数回の研究会を開催し、その成果を、雑誌論文や単行本の形で公表するとともに、それらを総合した結果を一冊の報告書にまとめる方向で締めくくりを考えている。
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