研究課題/領域番号 |
20H01189
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
松本 久史 國學院大學, 神道文化学部, 教授 (20365513)
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研究分担者 |
渡邉 卓 國學院大學, 研究開発推進機構, 准教授 (10726011)
一戸 渉 慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 准教授 (20597736)
星野 光樹 國學院大學, 神道文化学部, 准教授 (20616883)
根岸 茂夫 國學院大學, 文学研究科, 名誉教授 (30208285)
古相 正美 中村学園大学, 教育学部, 教授 (30268966)
高塩 博 國學院大學, 法学部, 名誉教授 (40236211)
齋藤 公太 神戸大学, 人文学研究科, 講師 (40802773)
白石 愛 東京大学, 総合研究博物館, 特任助教 (60431839)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 復古神道 / 荷田春満 / 神道思想 / 神仏関係 / 近世中期 |
研究実績の概要 |
近世中期における復古神道の発生と形成の過程の解明を目的とする本研究において、本年度の実績は以下のとおりである。 ①史資料の翻刻・分析 :昭和期刊行の『荷田全集』第6巻所収『日本書紀神代巻箚記』につき、東羽倉家文書の原典と照合して再校訂を行い、活字史料と原典における表記・用字に大きな差異があることを明らかにした。また、文芸史料としては伏見稲荷大社の和歌史料の翻刻に着手し、春満高弟の大西親盛の和歌学習に関しても、日記史料などからの検討を進め、国学者にとどまらず、冷泉家など堂上派との交流の事実を明らかにしている。 ②現地資料調査の実施 :高知城歴史博物館・オーテピア市民図書館に所蔵される、谷垣守関連資料の調査を実施した。垣守は垂加神道家の谷秦山の子であるが、春満の流れをくむ荷田在満・賀茂真淵の両者に入門していることから、垂加神道と復古神道との関係を解明するためのキーパーソンであると考えられる。調査においては和歌・律令の分野において荷田派の成果が多く受容されていることが明らかとなった。 ③定例研究会の実施 :研究成果の統合・情報交換のために、研究代表者・分担者・協力者が参加する「定例研究会」をZOOMを用いた遠隔で計7回実施した。研究会で交わされた議論において、現在「神道古典」と称される古典籍に関する荷田派のアプローチにつき『風土記』・『古語拾遺』に注目した分析・検討が必要であるとの共通認識を得た。これは、単なるテキスト分析にとどまるものではなく、荷田派のネットワークから神職・儒者・神道家との関係性を深く探求することによって、「復古神道」への展開につき、新たな知見が得られるのではという展望を見ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの流行及び全国に発令された緊急事態宣言・まん延防止措置等により行動制限が加えられたことによって、当初計画に記載していた関連資料の現地調査は、そのままでの遂行は困難となった。研究代表者および分担研究者はいずれも首都圏や京阪神、福岡県など特に流行の著しい地域に居住・勤務しており、また、現地調査で予定された出張地も京阪圏・中京圏などが多くを占め、現地における史料調査・収集それによる分析の進捗は滞らざるを得なかった。また予定しておいた定例の研究会による研究進捗の確認も対面での実施が困難となった。 これらの状況に直面し、令和2年度においては現地資料調査は実施できなかったが、関連資料の紙焼きデータを収集することで補いつつ、定例研究会等で検討を加えた。また、実施可能な現地資料調査を模索し、令和3年11月に荷田派国学の受容者として注目していた谷垣守の関連史料の調査・収集を高知県において実施した。 また定例の研究会もZOOMを用いた遠隔で実施することにより、滞りなく開催し、進捗状況を確認することができた。 学会発表等による研究成果の社会還元については、令和2年度はコロナウイルス流行により中止や縮小が相次いだために実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
定例研究会等における代表者・分担者の研究成果発表、および意見交換で明らかになったことは、復古神道の発生過程を解明するためには、17世紀末から18世紀中期にかけて起こった古典観の大きな転換に注目する必要があるということである。そのために、従来は「復古神道」の枠組みからはあまり考察されていなかった学者や神道家の活動や著述に注目して、それらの人々と荷田春満および荷田派国学者たちへの影響関係についての分析を進めていく。 具体的には現地資料調査を実施した谷垣守を中心とした高知県の史料の分析を進展させることをはじめ、17世紀末の復古神道発生直前における松下見林が果たした役割の大きさにも注目し、引き続き関連資料の収集分析を進める。さらには春満と同時代人であり、「国史官牒」主義を貫き実証的な神道・古典研究を進めた名古屋の吉見幸和や、18世紀中期に京都で独自の神道説を展開した多田義俊などの従来は復古神道の枠組みでとらえられていなかった人物との関係性についても、「神道古典」というアプローチから考察を加えていく。それらにより、古典観の転換をメルクマールとした復古神道発生過程の解明を進めていく予定であり、従来明らかにしてきたきた近世稲荷社や荷田派における学問ネットワーク研究をそれらに援用していきたい。 定例研究会はコロナウイルス流行の状況を見つつ、前年度に引き続き、ZOOMを用いた遠隔により予定通り実施し、さらに、そこで得られた研究成果は、積極的に学会発表を行うことなどにより公開に努めていきたい。
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