研究課題/領域番号 |
20H01204
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研究機関 | 新潟県立大学 |
研究代表者 |
石川 伊織 新潟県立大学, 国際地域学部, 教授 (50290060)
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研究分担者 |
落合 桃子 福岡大学, 人文学部, 准教授 (40434237)
神山 伸弘 跡見学園女子大学, 文学部, 教授 (60233962)
片山 善博 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (60313433)
小島 優子 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (90748576)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 美学 / ヘーゲル美学 / 18-19世紀美学史 / 美術史 / 絵画論 |
研究実績の概要 |
申請者の先行研究「ヘーゲル美学講義に結実した芸術体験の実証的研究」(2014-2018年 基盤研究(B) 課題番号26284020)では、ヘーゲルがベルリン大学で講義した4回の芸術哲学講義で言及している絵画作品を分析した。この成果をもとに、本研究では、ヘーゲルの絵画論を18-19世紀の美学理論上に位置づけるとともに、ヘーゲルの絵画論の後世への影響を絵画アカデミーとの関係で調査することを計画した。 その初年度にあたる2020年度には、すでに翻訳を終えたボアスレの日記を検討するとともに、バウムガルテンに始まる美学思想の展開を、ヘーゲルを含めその死後にまで及ぶ射程でで検討した。具体的には、バウムガルテンとその後継者の著作及び講義(これにはカントも含まれるであろう)が、原理的には「感性の学」であって、言及されている作品がほぼギリシア・ローマの文芸作品に限られていたのに対して、1801年に始まるA.W.シュレーゲルのベルリンでの文芸・美術講義以降では、建築・彫刻・絵画・音楽・文芸を包括的に論ずるものとなった。ヘーゲルの美学講義もこの延長上にあり、ヘーゲル美学の決まり文句である「芸術の終焉」を超える議論が展開されているのは明らかである。直近のゾルガーの美学講義、またヘーゲル以後に現れるシュライアーマッハーの美学講義等との関係がさらに検討されねばならないことが明らかとなった。 他方、ボアスレからゲーテにつながる芸術思想の流れの中でのヘーゲルの位置を考えるうえで重要なのが、ボアスレのネーデルラント絵画論とゲーテの色彩論である。ボアスレに関しては、日記に加えて書簡集と自伝中に現れる絵画論に注目して検討中である。ヘーゲルはボアスレとの交友を通じてネーデルラント絵画についての知見を得、これを発展させている。ゲーテの色彩論とのかかわりについての研究も現在進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナウィルス蔓延の影響で、対面での研究会は一回も開催できなかった。これに代えてZOOMによるオンライン研究会を、顔合わせ・研究方針についての議論も含めて、2021年9月末までに6回開催した。 国内での資料調査も、美術館・博物館・資料館等へ赴くことがむつかしい状況では、オンラインでの文献検索の域を出ることができなかった。この点については、海外の資料の調査と同様であるので、それほど困難はきたしていないが、求める資料がすべてオンラインで閲覧できるわけではないので、研究への影響が心配される。一刻も早く、国内での対面での研究会開催と、現場へ赴いての資料調査を実施する必要がある。 書籍等の研究資料の調達にも困難をきたしている。注文した資料の配達が遅れているといった物流の停滞の問題だけではなく、書籍そのものの刊行が延期されたり、刊行計画自体が白紙に戻ったりしている例が多々見られる。これは海外の出版物には特に目立つ。このために、検討予定であった課題そのものに接近できなかったこともあった。研究内容を精査する際には、検討課題となる資料そのものを精査するとともに、入手のための複数の方途を模索する必要があるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
幸い、2020年度予算の執行期限である2021年9月末までの段階では、研究代表者にも研究分担者にもコロナウィルスへの感染はなかったため、この点での研究の遅滞は見られなかったが、今後も予断を許さない状況である。とりわけ、本研究ではドイツでの調査が大きなウェイトを占めるため、今後のウィルス感染状況には特に注意を払い、研究の遂行に努めたい。そのためには、まず国内で可能な資料の分析に全力を尽くす必要がある。そのうえで、ドイツでの調査のために充分な準備をしたい。 第一に、今後、状況が好転した場合には直ちに現地調査が行えるよう、現地でなくてはできない調査と研究課題を絞り込む必要がある。 第二に、上記の精査に基づいて、ドイツの絵画アカデミーや資料館、美術館との接触を図り、こちらの研究意図を伝えて研究に協力していただけるよう、交渉することとする。 第三に、現在かなりの進展を見ている美学史の研究をさらに継続することとする。 第四に、ゲーテの色彩論研究を加速させることとする。
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備考 |
研究代表者である石川が勤務していた新潟県立大学のサイト上に作成したWEBページが存在したが、定年退職した2022年3月31日をもってこのページは登録抹消されている。現在、同様のページを外部のプロバイダを利用して作成する準備をしている。
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