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2021 年度 実績報告書

近現代美術における死生観の研究~「ヴァニタス」表象を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 20H01206
研究機関武蔵大学

研究代表者

香川 檀  武蔵大学, 人文学部, 教授 (10386352)

研究分担者 石田 圭子  神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (40529947)
ゴツィック マーレン  福岡大学, 人文学部, 教授 (50712444)
岡添 瑠子  早稲田大学, 文学学術院, 助手 (50803623)
仲間 裕子  立命館大学, 産業社会学部, 教授 (70268150)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード美術 / 現代アート / 写真 / 死生観 / ヴァニタス / 生の儚さ / 無常
研究実績の概要

今年度は、調査対象を日本人作家の作品に絞り、国内外での調査と研究会やワークショップ、および学会発表を行った。1)文献収集と作品研究: 代表者と分担者が各自で対象作家を決めて資料収集や作品実見を行なった。現代日本の写真やアートを中心に、「生の儚さ」や死生観の表象を研究した。また、国内で開催されていた現代美術の展覧会を視察し、表現のモチーフだけでなく媒体(メディウム)がもつ「儚さ」の意味作用について調査した。
2)国内研究会: 2022年の6月から2023年の3月にかけて数回にわたるオンライン研究会を実施し、上記の調査結果を互いに報告しあい、考察を深めた。また2022年10月には、日本美術がご専門の山本聡美氏(早稲田大学)によるオンライン講演を実施し、中世の仏教画から読み取れる死生観について講義いただいた。
3)ドイツとイタリアへの調査旅行: 新型コロナ・ウィルスの感染状況が落ち着いた2022年8月にドイツに渡航し、研究協力者であるヴィクトリア・フォン・フレミング氏(ブラウンシュヴァイク美術大学教授)と研究交流を行なった。また、ベルリンの旧国立美術館の館長であるラルフ・グライス氏より、18世紀から19世紀のドイツ絵画におけるヴァニタス表現について特別レクチャーを受けた。いくつかの都市で開催されていた国際美術展を視察し、現代アートにおける死の表現についても調査した。
4)学会発表: 2022年7月に表象文化論学会(於:東京都立大学)でのパネル発表を、9月にはオンラインでハーヴァード大学ライシャワー日本文化研究所との共同ワークショップを実施し、研究成果を公開した。これによって、本プロジェクトが取り組む死生観の表現という問題提起を、国内外の芸術研究の場で発信することができた意義は大きい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナ禍の鎮静のおかげで、この一年は研究が大きく進展した。当初のドイツの文献研究から、日本の作品研究や関連文献の調査に重点を移し、西洋のヴァニタス表現と比較するための日本の表現を検討することができた。これを踏まえ、2023年9月に東京都内で開催を予定している国際シンポジウムに向けて、研究発表の内容が固まりつつある。その一方、例えばドイツ側の研究者から求められている「日本に、無常をあらわすビジュアルの伝統はあるのか」という問いへの答えは、まだ明確に出されていない。具体例の検討を続けつつ、こうした理論的レベルでの総括を行なっていく必要がある。

今後の研究の推進方策

引き続き個別の作家研究を継続しながら、日本の図像伝統について知見を深めるための文献研究、および可能であれば日本文化研究者を招聘しての研究会をさらに開催する。随時、ドイツの研究者と連絡をとりあい、研究の焦点となる死生観の表現について意見交換を行う。
また、単純な西洋と日本との比較研究というにとどまらず、トランスカルチャーの観点から本研究の視野を拡大するために、このテーマを扱った文献研究にも力を入れる。科研研究会も、これまでの個別報告による文献と作品の分析だけでなく、より理論的な検討を目的とした検討会の開催も視野に入れて今後のスケジュールをたてたい。

  • 研究成果

    (24件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 図書 (3件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] ブラウンシュヴァイク美術大学(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      ブラウンシュヴァイク美術大学
  • [国際共同研究] ハーヴァード大学ライシャワー日本文化研究所(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ハーヴァード大学ライシャワー日本文化研究所
  • [雑誌論文] 〈ネイキッド・ポートレイト〉の黎明ー男性がまなざす裸体の自我2023

    • 著者名/発表者名
      香川 檀
    • 雑誌名

      月刊『ユリイカ』青土社

      巻: 55-3 ページ: 162-169

  • [雑誌論文] ナチズムと崇高の美学2023

    • 著者名/発表者名
      石田圭子
    • 雑誌名

      神戸大学近代発行会『近代』

      巻: 125 ページ: 37-70

  • [雑誌論文] パウル・ルートヴィヒ・トロースト―ナチズム建築の起源をめぐって2023

    • 著者名/発表者名
      石田圭子
    • 雑誌名

      神戸大学近代発行会『近代』

      巻: 126 ページ: 151-212

  • [雑誌論文] イミ・クネーベル作品における「見えないもの」と「見ること」2023

    • 著者名/発表者名
      岡添瑠子
    • 雑誌名

      『表象・メディア研究』早稲田 表象・メディア論学会

      巻: 13 ページ: 17-38

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Miyanaga Aiko and the Flow of Water2023

    • 著者名/発表者名
      仲間裕子
    • 雑誌名

      The Artistic Traditions of Non-European Cultures

      巻: 9 ページ: ー

  • [雑誌論文] Daido Moriyama : Pate der japanischen Strassenfotografie?2023

    • 著者名/発表者名
      結城円
    • 雑誌名

      C/O Berlin (Berlin: C/O Berlin Foundation )

      巻: 34 ページ: 13-17

  • [雑誌論文] 写真に似たものーゲルハルト・リヒターの〈記憶絵画〉と女性イメージ2022

    • 著者名/発表者名
      香川 檀
    • 雑誌名

      月刊『ユリイカ』青土社

      巻: 54ー7 ページ: 84-92

  • [学会発表] Artistic Interventions at Natural History Museums2023

    • 著者名/発表者名
      結城円
    • 学会等名
      Online-Workshop “Space Between/ Aidagara: Landscape, Mindscape, Architecture” (University of Glasgow)
    • 国際学会
  • [学会発表] 天皇とヴァニタス:大浦信行の版画連作《遠近を抱えて》2022

    • 著者名/発表者名
      香川 檀 Mayumi Kagawa
    • 学会等名
      国際共同ワークショップ「芸術と日本:ヴァニタス研究会(KAKEN)とハーヴァード大学の研究から」ハーヴァード大学ライシャワー日本文化研究所と本科研費研究会との共同開催
    • 国際学会
  • [学会発表] イメージ探求のパラレル・ヒストリー:“ダダ・カップル”ヘーヒとハウスマンの“その後”2022

    • 著者名/発表者名
      香川 檀 Mayumi Kagawa
    • 学会等名
      国際シンポジウム「ラウール・ハウスマンとポストダダ;危機の時代のアヴァンギャル ド」上智大学ヨーロッパ研究所/科研費基盤研究(C)(代表者:小松原由理、上 智大学)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ホロコーストの記憶と現代美術ーゲルハルト・リヒター《ビルケナウ》をめぐって2022

    • 著者名/発表者名
      香川 檀
    • 学会等名
      豊田市美術館「ゲルハルト・リヒター」展関連講演
    • 招待講演
  • [学会発表] 糸・織り・布・服──石内都の写真にみる儚さ2022

    • 著者名/発表者名
      マーレン・ゴツィック
    • 学会等名
      表象文化論学会第16回大会、(パネル:現代芸術における〈ヴァニタス〉モチーフ──虫・布・花)
  • [学会発表] “Garments of Life” - Motives of Temporality in the Photography of Ishiuchi Miyako and Onodera Yuki2022

    • 著者名/発表者名
      Godzik, Maren
    • 学会等名
      国際共同ワークショップ「芸術と日本:ヴァニタス研究会(KAKEN)とハーヴァード大学の研究から」ハーヴァード大学ライシャワー日本文化研究所と本科研費研究会との共同開催
    • 国際学会
  • [学会発表] ドイツ及び日本の美術に見られる老いの表現2022

    • 著者名/発表者名
      マーレン・ゴツィック
    • 学会等名
      福岡大学市民カレッジ
  • [学会発表] W. G.ゼーバルト『土星の環』とヴァニタス2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木賢子
    • 学会等名
      表象文化論学会第16回大会、(パネル:現代芸術における〈ヴァニタス〉モチーフ──虫・布・花)
  • [学会発表] 畠山直哉の写真における生と死2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木賢子
    • 学会等名
      国際共同ワークショップ「芸術と日本:ヴァニタス研究会(KAKEN)とハーヴァード大学の研究から」ハーヴァード大学ライシャワー日本文化研究所と本科研費研究会との共同開催
    • 国際学会
  • [学会発表] 「ヴァニタス」といけばな─花の写真の儚さ2022

    • 著者名/発表者名
      結城円
    • 学会等名
      表象文化論学会第16回大会、(パネル:現代芸術における〈ヴァニタス〉モチーフ──虫・布・花)
  • [学会発表] Vanitas and Ikebana: Transience of Flowers and Photography2022

    • 著者名/発表者名
      結城円
    • 学会等名
      国際共同ワークショップ「芸術と日本:ヴァニタス研究会(KAKEN)とハーヴァード大学の研究から」ハーヴァード大学ライシャワー日本文化研究所と本科研費研究会との共同開催
  • [図書] せんだいメディアテーク編『つくる〈公共〉50のコンセプト』2023

    • 著者名/発表者名
      香川 檀
    • 総ページ数
      209
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      978-4-00-023904-2
  • [図書] 『栗山斉:無にみつるもの ―Nothingness is Fullness, Fullness is Nothingness―』2023

    • 著者名/発表者名
      結城円
    • 総ページ数
      -
    • 出版者
      九州大学大学院芸術工学研究院
  • [図書] V.von Flemming / J.C. Berger(Hg.), Vanitas als Wiederholung2022

    • 著者名/発表者名
      Mayumi Kagawa
    • 総ページ数
      292
    • 出版者
      De Gruyter (Berlin, Germany)
    • ISBN
      978-3-11-076101-6
  • [学会・シンポジウム開催] 芸術と日本;ヴァニタス研究会(KAKEN)とハーヴァード大学の研究から2022

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公開日: 2023-12-25  

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