研究課題/領域番号 |
20H01207
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
池田 忍 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (90272286)
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研究分担者 |
小沢 朝江 東海大学, 工学部, 教授 (70212587)
村松 加奈子 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 講師 (40707973)
亀井 若菜 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (30276050)
赤澤 真理 大妻女子大学, 家政学部, 講師 (60509032)
大田 壮一郎 立命館大学, 文学部, 教授 (00613978)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 絵巻 / 南北朝・室町時代 / 慕帰絵 / 建築史 |
研究実績の概要 |
本年度の研究は、コロナ感染状況が引き続き厳しい状況下にあり、作品・史資料調査、およびフィールドワークの実施が計画通り進まず、各自の分担に沿った文献研究が中心となった。 『慕帰絵』の制作環境に関わる研究としては、村松加奈子氏による真宗の聖徳太子伝絵を中心とする研究が進展し、学会・論文発表がなされ、本科研のオンライン研究会(2021年7月3日)においても報告・検討の機会を持った。大田壮一郎氏による詞書筆者を手がかりとした『慕帰絵』の制作背景の研究と併せて、さらに議論を深めることを了解した。その後も、メールとオンライン研究会を重ねて、関連する建築史、宗教史、美術史関連の研究動向について情報を共有し、意見交換をおこなった。 年度末(2022年3月11日)には、東京国立博物館の許可を得て、同館所蔵「慕帰絵(模本)」(永井如雲・木本高嶺・石原重盈 明治時代・19 世紀、全10巻)の調査・撮影をおこなった。文献調査や東博研究員の土屋貴裕氏による情報提供を通じて、模本制作者の事績、模本制作の背景、来歴についての情報の蓄積と整理を進めた。また熟覧と撮影写真の検討を通じて、模本の制作姿勢にとどまらず、原本制作時の構図変更、細部描写に関する重要な知見を得ることができた。3月14日にはオンライン研究会を開催して、調査を実施した小沢・池田(人数制限により2名で実施)が報告をおこない、意見交換と情報共有をおこなった。さらに研究会終了後にも、メールで情報交換を重ね、模本と原本の展示歴などに関する史資料を共有した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ感染状況が引き続き厳しい状況下にあり、作品・史資料調査、およびフィールドワークの実施が計画通り進まなかったため。 また、許可を得て作品の熟覧・調査を行う場合にも人数制限があり、科研の分担者全員での意見交換の機会をオンライン研究会以外に持つことができなかった。そのため、文献史資料、絵画作品を共有した上での詳細な検討、意見交換に困難が生じた。各自の分担に沿った文献研究が中心となった。そのため論文執筆にも遅れが生じ、研究課題に直接かかわる研究成果を公刊することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
A『慕帰絵』と『最須敬重絵詞』及び「指図書」の情報と、初期本願寺史にかかわる文献史資料、絵画・肖像彫刻等に関する情報の照合、『存覚上人一期記』及び『存覚上人袖日記』の記述、覚如の著作等との照合を終える。これにより史実と虚構の関係を明確にして、本研究の基盤を固める(池田・小沢・村松を中心に全員が担当)。 B「遁世者の住まい」の理想像とその表象、および「歌会」の表象に関する中世絵画・文学による検討を終える(小沢・赤澤が担当)。これまでの研究で、『法然上人絵伝』をはじめとする同時代絵画資料、との比較検討が有効であることが判明したため、文献史料と併せて「遁世者」の住まいの実体と表象の関係をさらに探究する(小沢が担当)。 C 南北朝時代を中心に本願寺による絵画・木彫制作を含む造形の特徴を 東国門徒や仏光寺のそれと比較・考察する視点を導入し考察する(村松、池田が担当)。『慕帰絵』の女性表象の検討を継続し、一遍・親鸞・法然の伝記絵巻等における女性表象と比較し、かつ同時代の尼僧の信仰や経済的背景にかかわるジェンダー史の成果と照らして、特徴を明らかにすることで、虚構に込められた意図を探る(池田・亀井が担当)。 D 南北朝時代を中心に、絵巻の詞書筆者と絵師の実態、及び初期本願寺(本絵巻の企画者)との関係を解明する。絵画制作と受容の場、環境の関係を、同時代の文献史資料と作品調査を通じて吟味する(大田を中心に、全員で検討)。 本年度は上記の研究成果を生かし、『慕帰絵』全段にわたる各段の解説を執筆する。この作業によって、先行研究における誤謬、意見の相違を明らかにし、史資料に基づく自説の提示・公刊を目指す。また個別論文を各自が執筆して、『慕帰絵』を核とする14世紀の高僧伝絵と宗教史、都市史・建築史を総合する研究成果の取りまとめを準備する。
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