研究課題/領域番号 |
20H01214
|
研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館 |
研究代表者 |
小泉 惠英 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部, 部長 (40205315)
|
研究分担者 |
原田 あゆみ 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部文化財課, 課長 (20416556)
打本 和音 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (30812309)
福山 泰子 龍谷大学, 国際学部, 教授 (40513338)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 仏足跡 / タイ / ボードガヤー / ミャンマー / スコータイ |
研究実績の概要 |
現地調査に先立ち、仏足跡の造形と図像の変遷の歴史を古代スリランカまで遡って整理した。また、南アジア世界での仏足跡信仰説話と東南アジア各地への広がり、ブッダ成道の地ボードガヤーにおいて作られた独特の形式の仏足跡についても確認した。さらに、ミャンマー各地に現存する仏足跡の代表的な遺例をまとめた。タイの仏足跡信仰について、スコータイ時代以後急速な発展を遂げる108の吉祥文様を持つタイプに加え、それ以前の遺例を概観し、図像的変遷を辿った。 聖地信仰の視点では、古代初期以来のボードガヤーにおける仏教興隆から衰退の様相、さらに19世紀の復興までを考古学資料や文献記録によって振り返った。 仏足跡には、釈迦の他、弥勒や過去仏のものがあり、ミャンマーでは弥勒との関連が注意されることから、バガン時代の仏教寺院での弥勒信仰についても考察した。 海外渡航自粛緩和を受け、タイでの現地調査を2度にわたって実施した。調査地は、バンコク、カンチャナブリー、ウートーン、スパンブリー、ロッブリー、ナコーンサワン、スコータイ、シーサッチャナーライ、サムット・ソンクラーン、アユタヤーなど。各地の寺院や博物館の所蔵する仏足跡の実測、撮影を行ない、図像学的資料を数多く収集した。過去仏の仏足跡はタイでスコータイ時代以来、盛んに制作され、近代にまで及んでいる。時代的な展開を把握するため、こうした資料についても積極的に調査した。現地調査に当たりタイ芸術局の全面的な協力を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現地調査に先だって文献資料や画像資料をできるかぎり収集し、それに基づく研究会を複数回開催した。これらを通して現存資料の確認や、仏足跡や聖地信仰の研究の状況をある程度把握でき、調査対象を効果的に絞り込むことができた。 一方、コロナ禍による海外調査の制限のため、当初計画していたスリランカやインドの調査が困難であり、タイでの調査に重点を置くこととなった。また、タイへの上座部仏教ならびに仏足跡図像の伝来に重要な役割を果たしているミャンマーは、依然として政情が安定せず、現地での調査が困難であった。
|
今後の研究の推進方策 |
現地調査で収集した画像資料を比較、検討し、当初目指していた研究内容の一つである図像学的な特徴の分析について考察を進める。 聖地信仰の源流となるインドおよびスリランカでの調査を実施する。 聖地信仰の視点から、東南アジアでの仏足跡信仰の展開を考えるだけでなく、上座部仏教経典である『ローカパンニャッティ』などの仏教的宇宙観を記した経典との関わりからも検討する必要がある。
|