研究課題/領域番号 |
20H01216
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
市川 寛也 群馬大学, 教育学部, 准教授 (60744670)
|
研究分担者 |
郡司 明子 群馬大学, 教育学部, 准教授 (00610651)
茂木 一司 群馬大学, 教育学部, 教授 (30145445)
松村 泰三 東北芸術工科大学, 芸術学部, 准教授 (80573667)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | アートプロジェクト / アートベース・リサーチ / アクションリサーチ / 生涯学習 / 創造性 / 地域社会 / 農民美術 / 文化財 |
研究実績の概要 |
本研究は、地域社会に開かれた学びの場について、アートベース・リサーチ(ABR)の方法に基づき明らかにすることを目的とするものである。この目的を達成するために、2020年度は以下の3つの観点から研究を行った。 第一に、ABRの方法論に関する研究である。Patricia Leavyによる『Handbook of Arts-Based Research』を基礎文献として用い、ABRにおける「アート」の位置づけについて考察を行った。とりわけ、従来のサイエンスベース・リサーチと異なる特徴として「フィクション」という観点に着目し、あり得るかもしれない世界のあり方を実践する場としてのアートプロジェクトの意義を導き出した。 第二に、地域に根差した創造的な学びの場のあり方に関する歴史研究である。特に、大正期自由教育の時代を中心に文献調査を行った。その中でも、山本鼎が取り組んだ「農民美術」に焦点を当て、現在も伝統工芸として継承されている長野県上田市において関係者への聞き取り調査等を行った。 第三に、ABRの手法に基づくコミュニティ型アートプロジェクトの実践研究に取り組んだ。2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、当初の計画で想定していた茨城県水戸市の公立小学校におけるアートプロジェクトについては休止状態となった。そのため、もう一つの実践エリアとして設定した岩手県胆沢郡金ケ崎町において、重要伝統的建造物群保存地区にある保存物件を活用した学びの場づくりを展開した。 これらの研究を通して、アートプロジェクトの分析を試みた。特に、「ポストミュージアム」の考え方を導入することにより、サイト・スペシフィックな展示とコミュニティ・スペシフィックな芸術実践とを分類する枠組みを構築した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、海外での事例調査については見通しが立っていないが、国内での調査についてはおおむね順調に進展している。2020年度はABRの方法論に関する調査をはじめ、今後の研究に向けた理論的な基盤を構築することができた。 また、実践研究についても、感染拡大防止の措置を取りながら進行できている。むしろ、プロジェクトの内容をスリム化したことによって、地域に根差した学びの場としての特性を先鋭化させることができた。2020年度には活動を休止していた公立小学校でのプロジェクトについても、オンラインとのハイブリッドによって活動を継続する見通しが立っている。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究を通して、ABRの方法論としてのアートプロジェクトの有効性について明らかにされた。今後は、これまで実践研究として取り組んできたプロジェクト(岩手県胆沢郡金ケ崎町における「金ケ崎芸術大学校」と茨城県水戸市における「放課後の学校クラブ」)をABRの観点から検証する。また、これらの実践から導き出された学びの場の特性を踏まえ、他の地域においても応用することができるモデルの構築を目指す。その一環として、博物館等と連携した展示も計画している。 一方の理論研究については、これまでに文献調査を進めてきた「農民芸術」や「農民美術」に関する歴史研究を踏まえ、それらの継続的調査および現代的解釈を試みる。また、創造的な学びに関する海外の事例(オランダのイエナプラン教育やイタリアのレッジョ・エミリアなど)に関する調査を進め、研究会を開催する予定である。なお、本来であれば実地に赴いて調査を行いたいところではあるが、2021年度においても海外調査の見通しは立っていない。
|