研究課題/領域番号 |
20H01222
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研究機関 | 日本映画大学 |
研究代表者 |
アン ニ 日本映画大学, 映画学部, 特任教授 (70509140)
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研究分担者 |
五味渕 典嗣 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10433707)
張 新民 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (40326244)
志賀 賢子 (川崎賢子) 立教大学, 文学部, 特任教授 (40628046)
松岡 昌和 東京藝術大学, 大学院国際芸術創造研究科, 研究員 (70769380)
渡辺 直紀 武蔵大学, 人文学部, 教授 (80409367)
吉田 則昭 目白大学, メディア学部, 特任准教授 (90823609)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 越境 / 人的交渉 / 貫戦期 / 東アジア、東南アジア / 断絶と連続 / プロパガンダ / 大衆メディア / 製作と受容 |
研究実績の概要 |
2020年度からスタートした本研究はコロナ禍が世界的な規模で猛威を振う中で、オンライン設備をフル活用し、グループ研究会とミニシンポジウムを開催し、本研究のテーマに沿って、国立映画アーカイブでは、特別映写を行った。具体的な活動内容は下記の通りである。 (1)日本国内や国外からゲストスピーカーを招いたオンライン研究会を4回開催した。ゲストは日本国内から二人と韓国と香港からそれぞれ一人、計四人の研究者に報告してもらった。(2)本研究グループメンバーの三名が発表するシンポジウム「貫戦期日中映画における表象の越境」を早稲田大学20世紀メディア研究所と共催した。また代表者であるアンニが分担者を務める科学研究費基盤研究(A)18H03568「建国初期中国を移動する身体芸術メディア・プロパガンダー戦時期からの継承と展開」(研究代表者:星野幸代)との共催による国際シンポジウム「メディア化された身体/引き裂かれた表象―東アジア冷戦文化の政治性」をオンラインで開催し、二日間にわたって有意義な討議を行った。(3)国立映画アーカイブで特別映写を行い、戦時中の日中合作映画の他、計四本を鑑賞した。 また2020年度に刊行した研究成果は次の通りである。11月に開催したシンポジウムにおける口頭発表を文字化した論文三篇を20世紀メディア研究所刊行の学術誌『Intelligence』No.21(文生書院)に掲載し、社会に向けて研究成果を公表した。また代表者であるアンニの日本語著書『戦時日中映画交渉史』(岩波書店、2010)の中国語版は中国国内で刊行され、映画関係研究書籍のベストテンに選出されており、コロナ禍においても国際的な学術上の橋架を果たしたと言える。 そのほか、映画史家の佐藤忠男氏が所有している貴重な映画資料の一部を整理したことも、2020年度の成果の一つとして挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度では、コロナ禍の拡大により、研究者の国内と国外における資料調査が困難となったことで、予定していた国外での資料調査が実行できなくなり、国外でシンポジウムの開催も実現できなかった。しかし、我々はそれを逆手にとってオンラインによる国内外の研究者との研究活動を活発に行った。この点から言えば、予定以上の収穫を得ることができたとも言える。 上述のように、本研究のテーマに沿って国内外の研究者とのディスカッションを重ねて行うことを通して、メンバーたちがそれぞれ二年目で行う研究内容をより固めることができた。これはオンラインを活用した収穫である。また研究テーマを深めるためのこうした準備だけでなく、本研究の一年目にしては、国内シンポジウムと国際シンポジウムを共催し、研究蓄積のあるメンバーはそれぞれ新しい研究発表を行った。シンポジウムでの口頭発表はすぐに文字化され、学術誌の特集の一部として掲載された。 また、予定通り国立映画アーカイブで特別試写会を行った。 とはいえ、コロナの世界範囲での感染拡大のため、当初予定していたシンガポールやロシアでの資料調査を中止せざるをえなくなり、本研究が目指そうとするさらなる地域への広がりを展開する試みが達成できなかったのは大変残念に思う。
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今後の研究の推進方策 |
日本国内におけるコロナ感染がある程度終息しない限り、移動を伴う研究活動も実現できそうにない状況下ではあるが、昨年度と同様、オンライン研究会の開催を引き続き行うと同時に、メンバーたちが互いに資料紹介、共有するように努めたい。また国外の研究者との学術交流を続けるとともに、メンバーたちの新しい研究発表を行う予定である。 感染状況次第ではあるが、国立映画アーカイブでの映写会を二回ほど開催する。 もし下半期で感染が改善すれば、まず国内での対面ワークショップを開催する。2022年3月までに、もし国外への移動ができるようになるのであれば、本研究グループメンバーの一同は韓国もしくはシンガポールに赴き、資料調査と国外の研究者同士の交流を行いたいと思う。
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