研究課題
本研究は、その目的である高齢者のための匂いのアートを使った記憶想起と、それに伴う発話行為の効果を計測し、高齢者の感情の活性化、発達課題の達成、さらには認知機能維持・向上に資するための研究を進めた。研究当初から研究グループを『アート制作』『心理』『精神医学・看護』の3チームに分け相互の研究課題や結果を共有しながら進めたが、研究は新型感染ウィルスの世界的な流行で大幅に遅れ、研究手法の変更を余儀なくされた。その中で今年度は、『アート制作』チームは2つの展覧会を実施し、『心理』チームは2つの実験と学会発表を行い、『精神医学・看護』チームは回想法の調査方法を応用したナラティブアート体験キットを用いたワークショップを行い、様々な問題点や予想外の効果を発見し、改良を進めた。展覧会では、匂いを用いることで体験者の記憶が高い確率で蘇ることや、そのことを分かち合うことが体験の質を高めることが確認された。その際、匂いを直接嗅ぐことではなく空間にある匂いを嗅ぐことの体験が記憶想起に大切であることが現場の反応から判明したことは大きな発見であった。一方対面での実験が難しいことから独自に開発した体験キットの改良を進め実際に5組10人の被験者宅に送り、実験とアンケートを実施し具体的な反応を確認できたことは大きな成果となった。また心理チームの基礎的な研究も大学生44名と高齢者54名にそれぞれ懐かしいかおりを伴うアート作品の心理的効果に関する体験実験(アート作品を鑑賞した後の主観指標の測定)を行い、香りありアート作品のオブジェが記憶想起に大きく役立つことが確かめられた。各チームの成果は海外のアーティストも含めZOOMなどでの会議により具体的な意見交換を持つことで今後の研究内容に大きな可能性をもたらしている。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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においかおり環境学会誌
巻: 54 ページ: 161-166
10.2171/jao.54.161
嵯峨美術大学 紀要
巻: 49 ページ: 1-8