研究課題/領域番号 |
20H01226
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
日比野 愛子 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (00511685)
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研究分担者 |
山口 富子 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (80425595)
福島 真人 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (10202285)
伊藤 京子 京都橘大学, 工学部, 教授 (10397622)
鈴木 舞 東京大学, 地震研究所, 外来研究員 (70761633)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 科学実践 / シャドウ・ワーク / インフラ論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、科学実践のシャドウ・ワークがどのように生成し、どのように変容するのかを明らかにすることである。基盤的活動を、科学実践に必要不可欠であるが不可視化されている活動領域とする。そして科学のシャドウ・ワークを、基盤的活動が何らかの状況要因のもとで「負担的な活動」として問題化している活動領域とする。ビッグサイエンスに向かう複数の学術分野を比較対象として、横断的に分析することで、より広範囲の現象に適用可能なフレームワークの確立を進める。 2021年度は、当初の計画では、個別学術分野(生命工学、農学、宇宙科学)における事例研究として、現場調査ならびにシャドウ・ワークの抽出作業を進める予定であった。また年度の後半では得られたデータをもとに、シャドウ・ワークの生成に関連する要因(大型プロジェクト化の影響等)を解析する予定であった。新型コロナウィルス感染症の蔓延により調査活動が引き続き制限されていたことから下記を進めた。1)個別事例に限定せず、科学技術社会論領域の主要理論の整理を進め当課題の相対的な位置づけを検討し、書籍として公表した。2)研究会を実施し、当課題にかかわる重要論点として、職業としての科学の歴史的変遷や、インフラ一般のワーク論、科学の生産性の変遷等への分析・考察を深めた。3)個別事例(農学、宇宙科学、法学、情報科学)への調査を文献調査を含めつつ進めた。感染症拡大状況でも調査が進めやすく、かつ当課題に深くかかわる学術領域として、情報科学(のシャドウ・ワーク)を新たに事例に加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の拡大のため、初年次ならびに2年次に進める予定であった事例調査(インタビュー、参与観察等)は実施困難となったため。ただし、理論的検討の拡充、個別事例に限らない科学実践の基盤の調査、関連する論点の深堀等により、一定の研究成果を提出できたと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの知見をまとめ、異なる分野でどのような評価体系があり、それがどの程度機能しているかの比較事例分析を行う。シャドウ・ワークの問題にどのような対応法をとりうるかを考察する。シャドウ・ワークの評価問題では、評価体系の制度的不備と、研究者個人の主観的不満の二つを慎重に弁別して考察する。シャドウ・ワークが問題になるのは、当事者が基盤的活動に積極的な価値を見出せない時である。ただし科学者のキャリアパスでは、下積みの基礎的作業を通じて仕事の全体像を学習する側面もあり、これが個人の主観的低評価(不満)につながる可能性もある。これまでに得た評価・教育体系の調査データを精査し、個人レベルでの不満ではなく、共同体レベルの制度的不備に焦点化して議論をまとめる。
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