研究課題/領域番号 |
20H01227
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
多久和 理実 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 講師 (20814718)
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研究分担者 |
平野 葉一 東海大学, 文明研究所, 研究員 (20189856)
塚原 東吾 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80266353)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 科学史 / 科学機器 / 光学 / プリズム / アイザック・ニュートン |
研究実績の概要 |
2年目にあたる2021年度は、3年目以降に予定されている歴史的なプリズムの測定に備えて、予備調査と試験測定の準備を完了させた。 予備調査の成果1件目は、ニュートンの歴史研究についての研究発表会である。2021年5月の日本科学史学会年会において、シンポジウム「「新たなニュートン像」を越えて:数学、音楽、光学そしてニュートン主義における試み」を開催し、分担研究者・研究協力者による発表が4件実施された。同じ年会では、ミラノ大学ニッコロ・グィッチャルディーニ教授の特別講演「ニュートン研究の新しい潮流:数学史家の視点から」を実施し、周辺分野を含めた研究協力体制を形成した。 試験測定の成果1件目は、歴史的な科学機器の分析と活用についての研究発表会である。2021年12月の科学技術社会論学会年次研究大会において、オーガナイズド・セッション「歴史的な機器を活用した演示・科学教育の試み」を開催し、分担研究者・研究協力者による発表が3件実施された。 予備調査の成果2件目は、2021年7月にオンラインで開催された国際科学史技術史会議において、シンポジウム「アイザック・ニュートンの光学機器に関する包括的な研究」を開催し、今後の調査先となる、ウィップル科学史博物館、王立医科協会、ブールハーヴェ博物館、ユトレヒト大学博物館にコレクションの現状についての報告を依頼した。 予備調査の成果3件目は、光学機器を実際に利用する天文学の歴史についての研究発表会である。上記の科学技術社会論学会年次研究大会において、オーガナイズド・セッション「天文学史に関する記録の保存・評価・活用の試み」を開催し、分担研究者・研究協力者による発表が3件実施された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画と比べて、遅れている点が2つある。2021年度中に国内の歴史的プリズムの試験測定を完了させる予定だったが、多波長アッベ屈折計の納品に時間が掛かった影響と、調査先である姫路科学館の受入状況の様子見をした結果、4月初めに測定を行うことになったため、2022年度の実施になった。また、2020年度の日本科学史学会年会が中止になったため、アイザック・ニュートンの理論についてのシンポジウムが1年遅れの2021年度の開催になった。 以上の2点を総合して、2022年度以降に当初の計画に戻すことが可能な範囲ではあるものの、「やや遅れている」と結論する。
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今後の研究の推進方策 |
3年目にあたる2022年度は、年度末に予定されている海外での本測定に備えて、国内および海外の研究者と情報交換しながら測定準備と文献調査を進める。アッベ屈折計を用いた多波長でのガラスの屈折率の測定に習熟し、必要に応じて改良を行う。ニュートンについての歴史研究の調査と、博物館資料(科学機器)の活用についての調査を継続する。 2022年度後半に、海外で本測定を実施する。アッベ屈折計をイギリスおよびオランダに運搬し、大英博物館、王立医科協会、ウィップル科学史博物館、レン図書館に持ち込んで収蔵されている「ニュートンのプリズム」計5点の屈折率を本測定する。計5点のプリズムを分析することによって、ニュートンが残した実験記録に最も近いプリズムを特定する。特定されたプリズムと同じ光学特性を持つ現代のガラスを利用してプリズムを複製する。複製プリズムによる模擬実験を行い、実現される実験精度がニュートンの実験記録と一致するか確認する。アッベ屈折計をオランダに運搬し、ブールハーフェ博物館、タイラース博物館、ユトレヒト大学博物館に持ち込んで収蔵されている「スグラーフェサンデのプリズム」計11点の屈折率を本測定する。これらのプリズムが作製された際の機器職人やガラス産地について史料収集する。スグラーフェサンデが実現した実験精度を、ニュートンの実験精度と比較する。 4年目の2023年度は、海外での本測定の続きを実施する。アッベ屈折計をイタリアに運搬し、トレヴィーゾ市立博物館に所蔵されている「ニュートンのプリズム」計3点の屈折率を本測定する。本測定の結果をまとめたシンポジウムを開催する。
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