研究課題/領域番号 |
20H01250
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
近藤 信彰 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (90274993)
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研究分担者 |
大塚 修 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00733007)
山中 由里子 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 教授 (20251390)
菅原 由美 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 教授 (80376821)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歴史物語 / ハムザ物語 / 王書 / ペルシア語 / アレキサンドロス物語 |
研究実績の概要 |
コロナ禍のため、集まって研究会を行うことが特に前半は難しく、オンラインでの活動が中心であった。2021年4月25日にはオンラインで研究会を開催し、山中由里子氏がアレクサンドロス物語の新しい研究書を紹介し、菅原由美氏がジャワとスマトラにおける『歴史』について発表した。6月21日にはライデン大学のBen Arps氏を招き、”Hamza around the Java Sea: manuscripts, books, tale-telling, puppetry"という題でご講演いただき、東南アジアのハムザ物語について最新の知見をえた。11月27日には大阪大学で“Alexander Romance: History and Influence on the World Literature”という国際ワークショップを開催し、マレー文献学の権威であるHenri Chambert-Loir氏が“Iskandar Zulkarnain in the Malay World”、山中由里子氏が“Evolution of the Alexander Romance and its Repurposing in the Islamicate World”という題で報告した。アラビア語・ペルシア語でどのように発展し、それが東南アジアのマレー語圏にどのように広まったかが明らかとなった。 海外での調査は、年度の前半はコロナ禍で難しかったが、2022年1月に近藤信彰がトルコで調査を行い、オスマン・トルコ語のハムザ物語を収集した。さらに、繰越した予算から、2022年5月にイギリス、11月にドイツに赴き、ハムザ物語の諸写本を収集した。特に、ドイツ、ハレ大学のドイツ東洋学学会(DMG)コレクションにはこれまであまり知られていなかった写本6点を入手することができた。19世紀イランの写本文化の一端を示す貴重なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で国内の研究会や研究者の招聘が難しいなか、オンラインで研究会を続けることで、困難を克服してきた。繰越分も含めて、海外調査も進められている。重要な成果としては、研究協力者の山本久美子のEncyclopaedia IranicaのNaqqaliの項目(2021年12月Web掲載)が挙げられる。この百科事典はイラン学の国際的な最先端を示すものであり、本研究グループからこのような重要な項目の執筆者が出たことは、本研究が世界最先端であることを示す。共同研究の成果も盛り込まれている。また、近藤信彰の論文「16・17 世紀ペルシア語文化圏における講釈と講釈師」(『オリエント』64-2/2022年3月)は、近世にしぼってオスマン朝からムガル朝や中央アジアに至るペルシア語文化圏における講釈のあり方を論じた重要な研究である。 以上のように、厳しい条件のなかでも着実に成果を上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
日本への入国条件がなかなか緩和されなかったため、2022年度に行う計画であった国際シンポジウムを2023年度に延期し、それまでにできる限りの調査を行い、また、議論を重ねて、研究内容を練っておくという方針である。研究成果の出版についてはヨーロッパを代表する人文系の学術出版社Brillとコンタクトを取っており、うまくいけば2023年度の国際会議に出席してもらう予定である。成果がBrill社から発行されれば、世界の学界に大きなインパクトを与えることが期待できる。
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