研究課題/領域番号 |
20H01308
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
藤原 哲也 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (30362338)
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研究分担者 |
山下 麻衣 同志社大学, 商学部, 准教授 (90387994)
今城 徹 (今城徹) 阪南大学, 経済学部, 准教授 (20453988)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 戦傷病者 / 日本近現代史 / 障害者史 / 戦争 / 自立 |
研究実績の概要 |
2020年(令和2年)度は、本研究を遂行する上で基盤形成期と位置付けた。戦傷病者の家族関係を担当する藤原は、当初、福井県在住の戦傷病者の当事者及び家族に聞き取り調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染防止のために予定していた調査活動の延期を余儀なくされ、これまでの調査活動で蒐集した戦傷病者と家族の手記・体験記と口述記録の分析に注力した。その語りの中で、概して戦傷病者は「傷痍軍人会」を自らの戦後のアイデンティティの重要な拠りどころとして認識する一方で、戦傷病者の妻たちは「妻の会」を夫たちの思いとは別に、女性たちの親睦団体として参集していたことが判明した。 戦傷病者の医療・看護を担当する山下は、1950年代初頭における労働省による身体障害者に対する職業斡旋の枠組みの策定においては、戦傷病者を含む身体障害者の雇用を企業に強制する政策か、公的な支援制度の整備かという内容の活発な議論が交わされたことを明らかにした。 戦傷病者の経済状態に取り組む今城は、『障害史研究』第2号(障害史研究会編、2021年3月)掲載の研究ノート「矜恃と労苦-傷痍軍人とその妻の戦後経験-」(藤原哲也、山下麻衣と分担執筆)において、滋賀県傷痍軍人会記念誌に寄稿した傷痍軍人とその妻の記述内容を類型化を試み、戦傷病者は戦場での受傷病体験を記し、一方その妻は戦時・戦後の日常生活における苦労について語る場合が多かったことを明らかにした。また、戦闘経験がないまま戦傷病で戦傷病者となった者が、戦闘の結果戦傷病者となった者に対して引け目を感じていたことがわかる具体的事例を紹介し、戦争体験を通じて戦傷病者に観察される多様性について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
参加研究者各々は、担当している分野(家族、医療・看護、経済)から戦傷病者の戦後の生活実態の資料分析を進めると同時に、参加研究者間で意見交換を行い、2020年度の当初の目標としていた戦傷病者が実際に直面した生活上の問題を分類・整理することができた。同時に、コロナウイルス蔓延のために口述記録が満足に実施できなかった藤原の研究の今後の進展が待たれる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、基本的に前年の戦傷病者の生活実態の分析を継続する。また、新たな戦傷病者に関する史料収集の発掘と戦傷病者と家族への口述記録の実施を併せて行っていく予定である。
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