研究課題/領域番号 |
20H01329
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
宮沢 千尋 南山大学, 人文学部, 教授 (20319289)
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研究分担者 |
武内 房司 学習院大学, 文学部, 教授 (30179618)
湯山 英子 北海道大学, 経済学研究院, 研究員 (70644748)
千葉 功 学習院大学, 文学部, 教授 (50327954)
北澤 直宏 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任研究員 (00844630)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 近代・日本ベトナム関係史 / マルチ・アーカイブズ的研究 |
研究実績の概要 |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の全世界的な拡大により、予定されていたフランス、ベトナム、台湾での海外調査を実施することができなかった。しかし、湯山英子は外務省外交史料館などで資料収集を行うことができた。 本研究課題の主たる資料である西川寛生氏のベトナム滞在日記(1940年9月‐1945年9月)の解読作業を月1回のペースで計12回オンラインで実施し、1944年6月初旬までの日記をワープロ原稿に起こすことができた。さらに オンライン研究会としては、2020年9月4日に宮沢千尋が「抗仏親日期のカオダイ教」というテーマで発表した。12月6日には勅使河原章氏に「『映画旬報』『映画評論』『ビンミン新聞』から見えてきた、アジア・太平洋戦争期、仏印での日本映画上映」というテーマで発表していただいた。 また、遺族から学習院大学に寄託されている西川寛生関係文書の一部を分担金を使用することによりデジタル化することができた。 宮沢千尋が1940-1945年にベトナムの吏部尚書(首相)を務めたファム・クインの1910年代から1930年代の言論活動と、彼の主張した言語・文化ナショナリズムに関する研究発表を行った。宮沢はまた、日本軍が1945年3月9日にフランス植民地支配を解体した「仏印処理」に際し、ファム・クインが日本軍や特使に対してどのように対応したか、そして吏部尚書辞任に至ったかを、クイン本人の回想録やバオダイ皇帝、皇帝秘書ファム・カク・ホエ、日本の特使横山正幸の回想録から時系列的に整理し、クインがどのような考えから辞任に至ったかを明らかにする論文を公刊した。武内房司は、中国近代の民衆宗教が東南アジアに伝播し、ベトナムなどでその地の文化の影響を受けて独自の発展を遂げ、宗教運動や民族運動を活性化させたことを明らかにした書籍を編著者として公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主たる資料である西川寛生氏の戦時期日記に関しては、2022年度中に全文の解読が完了した。 2020年度の研究計画で実施する予定であった海外調査については、2022年度に研究分担者である武内房司がフランスで、湯山英子と研究協力者1名が台湾で、北澤直宏がベトナムで実施することができた。 これらの海外調査の成果は、西川寛生氏の戦時期日記の解説や、日記中に出てくる人物、団体、事件、地名などの注釈執筆の際の資料となった。西川氏の戦時期日記全文に解説、注釈を施して刊行するための原稿は2023年4月に完成し、現在、学習院大学に出版助成を申請中である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年4月に西川寛生氏の戦時期日記に解説、注釈を施した出版のための原稿が完成し、現在、西川氏の日記や関係文書が遺族から寄託されている学習院大学に出版助成を申請している。助成を受けることができれば、2023年度中に刊行する。 2023年度の研究推進方策としては、分担金を使用して、戦時期日記を基に、「西川日記から見る戦時期日本・ベトナム関係の再検討」(仮)と題した国際ワークショップを、2023年秋に南山大学で開催する予定である。 フランス、ベトナム、台湾から専門研究者を招き、戦時期西川日記を題材にして、近代日本・ベトナム関係を再検討する視角や論点として何が考えられるか発表してもらう。 日記の概略と特徴については研究代表者である宮沢が分担者、協力者の意見を取りまとめて発表する。 白石昌也早稲田大学名誉教授をコメンテーターとして招き、研究の方向性を示していただくとともに、日本国内のベトナム、ラオス、カンボジア、タイの専門家を招き、議論に参加してもらう。
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