研究課題
本年度は国際文化センター(クラクフ)と国際セミナー「境界地域の共有遺産研究ポモジェ・ヴァルミヤ・マズリ」を開催し、ドイツ騎士団領、王国都市グダンスク、プロイセン王国/ドイツ帝国、ポーランド王国/共和国の地域の細部にまで埋め込まれた複雑で複層的な歴史の諸相を調査した(2024年8月23-31日)。中世後期から第二次世界大戦後までの長期的な変容のなかでの文化の混交、支配層の交代のなかでの社会的破砕、記憶における多層性が検討の中心となった。とくに第二次世界大戦末期に市街地の大部分が破壊され、ほとんどの住民が追放されたグダンスクでは、戦後の「都市再建」計画の戦略について現地研究者の報告をえて、活発な議論を行った。国内研究会としては研究協力者が『岩波講座世界歴史』に発表した論考の合評会を行うと同時に、本研究課題の研究成果を総括する作業を続けた。その成果は研究期間終了後の2024年5月19日日本西洋史学会大会でのシンポジウム「帝国とネイションの語り直し」で発表した(篠原 琢「帝国崩壊を語り直す:『国民化する帝国』、ハプスブルク君主国とその継承諸国」、青島陽子「ロシア史における『帝国論的転回』再考」、中澤達哉「帝国の叙法―近世帝国論と近代帝国論を架橋する―」、ほかに研究分担者以外から稲垣春樹「イギリス帝国と法;ポスト「ポストコロニアル」総合へ向けて」)。近年の帝国研究は帝国の抑圧性よりその包摂性を強調し、さらに従来は対立的に捉えられてきた帝国と、帝国内外の諸国民社会(ネイション)の形成過程の相互規定性、相互依存関係が明らかにしてきた。しかしウクライナ戦争はそうした帝国論の動向に衝撃を与え、古典的な帝国像とネイション解放のイメージをよみがえらせたが、帝国研究、ネイション形成の研究成果・議論の進展を前に巻き戻すことはできない。研究計画段階とは異なる段階で研究を総括することができた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Acta Slavica Iaponica
巻: 44 ページ: 145-166
歴史学研究
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巻: 1191 ページ: 128-142
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東欧史研究
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