研究課題/領域番号 |
20H01335
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
中野 博文 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (10253030)
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研究分担者 |
肥後本 芳男 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (00247793)
小原 豊志 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (10243619)
山本 貴裕 広島経済大学, 教養教育部, 教授 (10279052)
岩野 祐介 関西学院大学, 神学部, 教授 (20509921)
横山 良 神戸大学, 国際文化学研究科, 名誉教授 (30127873)
長田 浩彰 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (40228028)
遠藤 泰生 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50194048)
田中 きく代 関西学院大学, 特定プロジェクト研究センター, 客員研究員 (80207084)
朝立 康太郎 西南学院大学, 国際文化学部, 准教授 (80513762)
岩崎 佳孝 甲南女子大学, 国際学部, 准教授 (90340835)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ポピュリズム / 共和主義 / 奴隷制 / 民主政 / 人種 |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀北米史を対象として、これまでのポピュリズム理解の刷新を目指してはじめられたものである。研究初年度の予算を使用しておこなったのは、研究代表者と分担者が調査をおこなう際に必要な枠組みをつくることであった。ポピュリズムという観点からおこなわれている歴史研究の状況を批判的に考察し、何が争点となっているかを、研究メンバーで共有した。それとともに、ポピュリズムを呼び起こしている社会背景について理論的検討をおこなった。 事例研究では、21世紀のポピュリズムで核になっているのは、白人キリスト教徒による右翼運動であることに注目して、そうした運動の系譜をどのように歴史的にたどるのかをめぐって、宗教、立憲主義、連邦制といった側面から考察した。また、19世紀アメリカ世界を理解するうえで必須である領土膨張や奴隷制をめぐって、現在の歴史研究の到達点を確認した。 これらを検討した結果、ポピュリズム運動の主体の多様さ、そしてポピュリズムと呼ばれる思想の体系性の欠如と、どう向き合うかがポピュリズム史研究の鍵であることが明らかになった。ポピュリズムを他の政治理念と比べると、理念の内実が変幻自在に変化するところに特徴がある。時代情勢のなかで生まれた様々な社会要求を取り入れて、左派も右派も、革新も保守もポピュリストとして行動しているのである。このため、共同研究が拠ってたつポピュリズムの定義を明確にして何を実証するかが死活的に重要であり、この点、本研究ではポピュリズムの多様なかたちと、様々なポピュリストを生みだすことになった北米特有の文化的伝統に焦点をあてることにした。そして伝統への視角として、A・トクヴィル、R・ホフスタッター、R・ウィービらのデモクラシー理解と接合させながら、人民主権の解明を目指すことでポピュリズム史研究の全体的統一をはっていくこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は科研に採択された時からコロナ禍に苛まれた。本科研で研究活動の中心となっているのは海外調査である。この点、2020年度、2021年度、そして2022年度の前半まで、厳しい渡航規制が存在したため、本来、予定していた海外調査が研究分担者の1名を除いて実施できなかった。このため、科研申請時点では研究1年目から計画していた海外調査を研究4年目におこなうという大変な遅延が生じることとなった。 こうした事態を受けて、海外調査ができなかった期間、共同研究の重点を研究史の批判的考察とポピュリズムの理念的考察に置いて、国内での研究会をオンラインと対面で実施していった。研究分担者の専門とする領域においてポピュリズムが、どのように表れているか、その歴史的文脈の立ち入った考察を求めるとともに、研究協力者にその知見を利用してポピュリズムの考察をおこなっていただいた。この結果、北米史におけるポピュリズム理解の深化を一定程度、達成することができた。 また、研究2年目の夏には海外渡航ができるとの期待が高まったため、これに備えたが、実際には規制が強化されたため、科研予算の事故繰越しをせざるを得ず、このため2020年度の研究は2022年度に終了することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
遅れている研究の進捗状況を改善するための方策は、その原因となっている海外調査を早期に実施することに尽きる。しかし、コロナ禍による経済混乱、そして2022年にはじまったウクライナ戦争もあって、海外調査の費用が高騰し、渡航に必要な時間も長くなっている。 このため、分担者それぞれの研究トピックを慎重に検討して、本研究において必要性の高い海外調査に重点的に予算と時間を振りあてる。また、海外調査の遅延に対処するため、海外調査の代替策をとることにする。購入可能な一次資料を入手して、考察をおこなうのである。無論、海外調査を完全に代替することはできないが、これまでおこなった史学史的検討をもとに、現在の研究でもっとも必要な領域の調査をピックアップし、そのための資料を揃えることとする。 なお、海外調査や資料収集にあたっては、海外の研究協力者と相談しながら決定する。このことで、研究協力者が成果報告に参加する環境を整備する。
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