研究課題/領域番号 |
20H01346
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
足立 拓朗 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 教授 (90276006)
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研究分担者 |
三宅 裕 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60261749)
西秋 良宏 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (70256197)
宮田 佳樹 東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (70413896)
覚張 隆史 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 助教 (70749530)
板橋 悠 筑波大学, 人文社会系, 助教 (80782672)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 乳製品 / 西アジア / 銅石器時代 / 新石器時代 |
研究実績の概要 |
コロナ禍により、当初、ヨルダンにおいて計画されていた発掘調査による新たな試料の獲得は実施できなかった。この状況に対応するため、これまで日本に持ち帰りが認められている出土土器資料の科学分析に着手した。1970年代にイランで調査された資料が中心となった。 また、トルコ、中央アナトリアのヒツジ飼養を開始した初期牧畜民の同位体分析を行い、その食習慣を復元した。その結果、初期牧畜民の動物性タンパク質(肉やミルク)摂取率は狩猟を主な生業としていた時期の人々と比べて、ほとんど変化していなかったことが明らかとなった。ミルク利用は狩猟の低調化による動物性タンパク質摂取の低下を補う働きをした可能性がある。 土器付着物以外にも人骨の科学分析も行った。金沢大学のLC/MS/MSを用いた乳タンパクの検出に関する手法で検討を進めた。試料としては、1970年代に筑波大学がイランで調査した新石器時代のタペ・サンギ・チャハマック遺跡出土人骨を使用した。この人骨の歯石のサンプリングを実施し、乳タンパクが検出されるか検討を進めた。 トルコやアゼルバイジャンでは発掘調査が再開できたため、これらの出土遺物の分析も順次進めている。ただ、アゼルバイジャンの土器付着炭化物からは、乳製品の証拠が検出できなかった。乳製品の利用が行われていない時期なのか、分析した土器が乳製品と関連がないのはは、まだ不明である。今後は分析数を増やして、検討していく予定である。また、実験考古学の手法を取り入れることにより、より実証的な研究になるように実験方法を模索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな発掘出土資料による分析は行えなかったが、これまで日本に持ち帰っていた土器・人骨資料で成果をだせる目処がついた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度終了時点で、当初予定していたヨルダンでの試料採集は実施できておらず、1970年代に日本に持ち帰られていた試料の分析や実験考古学による研究に移行することにした。令和4年度には、主にイランとトルコ出土の試料の分析を進める予定である。この研究は分担者の宮田佳樹と板橋悠が実施する。また、実験考古学的な研究は代表者の足立が復元土器を使用して行う。生乳によるバターの生成実験を行い、その過程で生じた土器付着炭化物の分析を行い、出土遺物の分析と比較検討を実施する。
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