研究課題/領域番号 |
20H01353
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
長井 謙治 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (20647028)
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研究分担者 |
卜部 厚志 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 教授 (20281173)
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 縄文時代草創期 / 古環境 / ヤンガードリアス / 生業活動 / 適応 |
研究実績の概要 |
縄文文化の形成過程は、温帯森林の拡大と局地的な環境変化にあわせて、時期を違えて多様に推移したと認識されるようになっている。本研究では、多様な縄文化プロセスについて検証するために、人間-環境作用の細かな歴史情報が得られる山形県北町低湿地を対象として、内陸部湖畔の地域的適応について明らかにする。そのために、自然科学研究者と連携した合同発掘調査を実施して、人間生活の場である遺跡周辺の古環境をできる限り詳細に復元するとともに、その中で成立していた生活像(生業活動と食性の実態)を解明する。本研究の目的は、日本最古級の内陸湿地性集落址からローカルな環境変化を導き、それに対応した人類の適応を最新技術により解き明かすことにある。 令和2年度は2018・19年度調査出土遺物を中心とした自然科学分析とオンライン研究会を実施した。また、白竜湖湖岸堆積物を対象としたボーリング調査を実施した。それらの活動記録については、ウェブサイト基盤研究(B) 縄文文化形成期の北町低湿地遺跡における古環境と生業の地域的解明 - researchmapに掲載している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19による影響を受けて、初年度についてはオンライン会議を中心とした室内分析を行った。2020年度は当初予定していた野外合同調査を規模縮小して、少人数による地質学的調査と2018・19年度出土遺物の室内分析を重点的に実施した。現在までに、北町遺跡と大湿地帯(白竜湖)を結ぶ軸線上(B0~B5)で表層ボーリング調査を実施して、ヤンガードリアス前後の環境変化を高精度復元するための古環境データを獲得している。室内分析においては、2018・19年度に出土した遺物と土壌を用いて、環境DNA解析の予備的試みを実施した。更に、出土黒曜石製石器の蛍光X線分析、出土土器付着物の年代測定と安定同位体分析、堆積物と焼礫の14C/TL年代測定、及び動植物遺体を用いた食性・古環境分析に着手した。2019年度調査で出土した1号住居址(多縄文期)床面ブロックサンプルについて、室内調査を実施して、微細な各種の有機質遺物の採取に努めた。
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今後の研究の推進方策 |
2020・21年度調査に採取したボーリングコアの自然科学分析に着手する。具体的には、鍵層付近の放射性炭素年代測定を実施して、更にその前後における花粉分析を行う。令和2年度調査により、遺跡地から約50m離れた地点において、ヤンガードリアス前後の環境変化が捉えられた。また、より遺跡地に近い地点の環境変化について、細かな時間軸に沿った復元を目指している。調査トレンチ内での花粉・珪藻・火山灰の導出を行って、ボーリングコアと同精度のC14年代測定を実施する。こうして、遺跡地とその周辺における更新世/完新世移行期の生活環境の変化を追跡して、縄文草創期後半期における湖岸資源環境を復元的に理解するための準備を行う。なお、2018・19・21年度調査出土遺物の再整理と採取土壌の保存を通して、自然科学による分析成果を総括するための準備を行う。
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