研究課題/領域番号 |
20H01354
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
中久保 辰夫 京都橘大学, 文学部, 准教授 (30609483)
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研究分担者 |
岩越 陽平 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任技師 (60815067)
小田 裕樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (70416410)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本古代 / 土師器 / 須恵器 / 饗宴 / 土器編年 / 陶邑窯跡群 / 布留遺跡 / 新堂遺跡 |
研究実績の概要 |
2年目となる2021年度は、2020年度に引き続き、本研究が2つの柱とする複眼的編年検証と日本古代の饗宴論を基軸として研究を遂行した。本年度も昨年度に続き、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたが、オンライン研究会(5月15日、6月20日、9月19日、12月17日、3月6日)に加え、7月23日に新堂遺跡土器(5世紀初頭)、10月31日に布留遺跡(2世紀~8世紀)、3月5日に今城塚古墳(6世紀前葉)の資料調査を対面実施するなど、着実に調査研究を実施できた。研究協力者新規2名の参画を得て、30代を中心とした研究分担者・協力者総勢17名によって、主要資料の年代論、通時代的な饗宴論など、研究を深めることができた。以下に概要を記述する。 1)複眼的編年検証 複数の理化学的年代測定法により暦年代を検証し、さらに測定成果を型式学的・層位学的に再検討するという二重の意味を持つ複眼的編年検証を遂行した。a)新堂遺跡河道出土土器を対象に、酸素同位体比年輪年代法とAMS放射性炭素年代測定の結果と土器のライフサイクルを検証した。b)布留遺跡出土土器の光ルミネッセンス年代測定は機器修理等が間に合わず、次年度持ち越しとなった。一方、布留遺跡出土土器を通時代的に観察し、東海系須恵器の出土傾向、消費地における編年課題を議論した。c)未報告資料である今城塚古墳出土土器の資料調査を行い、土器編年上の位置づけを検討した。 2)日本古代の饗宴論 非日常的な共飲共食である饗宴を主題として、研究会および複眼的ワークショップで議論を重ねた。研究会はオンライン開催とし、饗宴に関する英書講読、日本古代の饗宴論や装飾須恵器に関する論文講読会を実施した。また、日韓の貯蔵器の容量計測に加え、新堂遺跡を対象とした煮炊器調理痕跡の記録手法の開拓、復元カマドを用いた調理実験などにも挑戦した。 研究の成果は論文、口頭発表等で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス蔓延により制限があったものの、年代測定を進め、複眼的ワークショップを予定通り、対面で開催し、さらにオンライン会議等を活用して、研究会を予定以上の回数で実施できたなど、本研究課題はおおむね順調に進展した。とりわけ、饗宴に関する学史整理ができ、古墳時代から飛鳥時代にかけて、土器様式と饗宴の場が連関しつつ、変質していくことを考察できた意義が大きかった。以下に、現在までの進捗状況についてまとめたい。 <複眼的編年検証> a)2020年度に引き続き、新堂遺跡を対象に、酸素同位体比年輪年代法とAMS放射性炭素年代測定の結果をもとに、土器型式や河道の堆積関係を検証した。b)今年度の新規年代測定として新出資料である京都府亀岡市金生寺遺跡出土資料(布留2式~TG232型式)について、AMS放射性炭素年代測定を実施。c)布留遺跡資料を対象に、5世紀代~8世紀にかけての土器編年上の課題について吟味できた。d)今城塚古墳出土土器を熟覧し、その型式学的位置づけを議論した。 <日本古代の饗宴論> 6月20日は東アジアでの饗宴論、9月19日は英語圏での饗宴論に関する論文講読会を開催し、3月5日には研究分担者・協力者が研究成果を発表して、参加者と饗宴論を深めた。また、5月15日にSfM/MVS技術を用いた写真測量について勉強会を開催し、10月12日に破片資料で実践するなど、協力者とともに導入を進めた。さらに、新堂遺跡河道出土布留式系甕を中心に、スス付着範囲や被熱範囲等を高精度の分光情報として記録することに成功し、古代土器の調理復元に関する実証的な議論ができる基礎を開拓できた。同様に、復元カマドと土器を用いて、調理実験も行い、土器形状やサイズ、調理内容に関する知見も得ている。こうした成果は、饗宴論の中で来年度以降、位置づける予定である。したがって、当初計画以上に進展がみられた部分もある。
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね順調に進展しており、研究計画に掲げた布留2~3式、TK43型式期、飛鳥Ⅱ~Ⅲ式の編年論的検討を進めることができている。次年度は、TG232~TK73型式期、TK43~209型式期について複眼的ワークショップの開催を行い、検討を深める予定である。推進方策の詳細は次の通り。 <複眼的編年検証> a)AMS法による放射性炭素14年代測定値が得られた金生寺遺跡出土土器群について、型式学的に再検討する。b)古墳時代前半期の土器群が得られた新出資料である大阪府高槻市上牧遺跡出土土器を対象にAMS法による放射性炭素14年代測定を計画、c)布留遺跡出土土器について光ルミネッサンス年代測定を実施。d)TK43~209型式期を中心に、陶邑古窯址群の基準資料について複眼的ワークショップの開催。e)平安時代土器や東播系須恵器窯の資料についても、研究代表者を中心に資料調査を進める。 <日本古代の饗宴論> 2020年度、2021年度に着手できた貯蔵容器変遷の日韓比較、古墳時代から飛鳥時代にかけての土器様式の変化と饗宴の場に関する複眼的な議論を継続して進める。また、饗宴の器と場といった最終的な消費の側面だけではなく、饗宴に至る準備や日常性との比較として、貯蔵器、煮炊器の分析が重要と考え、その基礎検討を深化させる。具体的には、2020年度に進めることができた、布留遺跡出土初期須恵器未報告片などの三次元計測による資料化、5~7世紀代にかけての煮炊具に付着した調理痕跡の高精度分光情報記録、復元カマドと土器を利用した復元的調理実験を推進することである。これによって、醸造量の変化、料理内容のエスニシティや階層性などを議論する基礎情報としたい。 本研究課題の3年目となる本年度に、成果報告についても準備を進める。
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備考 |
・京都市営地下鉄椥辻駅構内の「アートロードなぎつじ」にて、弥生時代から古墳時代の山科区出土土器を展示するなど、特色あるアウトリーチ活動を実施した。
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