研究課題
本研究の目的は、マヤ地域で採取した年縞堆積物に最高精度の年代軸を与え、数週間スケールの気候(気象)復元をおこなうことで、気候変動と文明盛衰の因果関係に迫ることである。2020年3月に掘削したサン・クラウディオ湖の年縞堆積物コア(SCL20)を分割し、視認できる植物遺骸をすべて拾い上げ、放射性炭素年代測定をおこなった。その結果、サン・クラウディオ湖には、紀元前3000年以降の堆積物がほぼ連続的に存在することが明らかになった。2022年には追加の掘削調査をおこない、すべての時代で誤差10年未満を達成できる量の堆積物試料(長さ4m x 20本)の採取にも成功した。さらに、SCL20の蛍光X線分析をおこない、過去4600年間にわたる気候・気象変動を復元した。分析には、イギリスのアベリストウィス大学所有のItraxをもちいた。長さ4.6mの完全連続な地層を全層準にわたって40ミクロン間隔でスキャンした。これは、平均0.5カ月の時間分解能に相当する。この分析によって年縞に記録された雨季・乾季の乾湿変動が取り出せていることも確認した。分析の結果、西暦900年ごろに少なくとも約15年間、気候が不安定になった(=極端気象が増加した)時期があった。また、西暦1000年ごろを境に、乾燥化が起こったことがわかった。加えて、西暦1000年以前と以降を比べると、西暦1000年以降、気候が不安定化する時期が増えたことも明らかになった。さらに、同じ試料の窒素安定同位体比分析を試みた。その結果、湖周辺の人間活動の痕跡を検出することができた。サン・クラウディオに都市が築かれるよりもずっと前から、人間がたびたび湖の周りで生活を営んでいたことがわかった。これらの結果を比較すると、西暦900年ごろの極端気象の増加は、サン・クラウディオの都市が放棄された時代に一致した。このことは、極端気象の増加が、古典期マヤが衰退した原因の一つである可能性を示している。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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