ニワトリはセキショクヤケイを、ガチョウはガン族の鳥を家畜化した家禽である。ニワトリの骨は日本列島では弥生時代中期の包含層から検出されており、その年代も紀元前4世紀~同3世紀であることが確認されている。しかし、その導入元と目される朝鮮半島や中国にニワトリがどのように拡散してきたかはよく分かっていない。一方、私たちの研究によって中国の長江下流域では約7000年前からガン類が飼育されていたことが明らかになった。本研究の目的は、中国、韓国、日本の遺跡から出土した鳥骨の複眼的解析から、ニワトリとガチョウの飼育の起源と拡散の様相を解明することを通じて、各時代・地域において「ヒトはなぜ家禽を必要としたのか?」を考察することである。今年度の研究の概要は以下の通りである。 1.中国と韓国における動物骨の出土遺跡のデータベース化を進め、キジ科とカモ科の出土例の収集に努めた。 2.南京博物院、復旦大学、黒水国遺跡・保存管理所、賈湖遺跡博物館、中国社会科学院において、遺跡出土鳥類遺体や鳥型土製品等の調査を実施した。 3.和蘭商館跡(長崎県長崎市)、カラカミ遺跡(長崎県壱岐市)、青谷上寺地遺跡(鳥取県鳥取市)、唐古・鍵遺跡(奈良県田原本町)、大坂城下町跡(大阪府大阪市)、京橋一丁目遺跡(東京都中央区)、元浅草遺跡(東京都台東区)などの遺跡から出土した鳥類遺体を分析した。 4.遺跡出土資料との比較のために、実験施設や動物園などに働きかけて鳥類の遺体を入手し、骨格標本を作成した。また、山階鳥類研究所や奈良国立文化財研究所、国立科学博物館などの鳥類骨標本を収蔵している研究施設を訪れ、骨格標本の観察・計測をおこなった。
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