研究課題/領域番号 |
20H01371
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
日下 宗一郎 東海大学, 海洋学部, 特任講師 (70721330)
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研究分担者 |
申 基チョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 准教授 (50569283)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 縄文時代 / 古人骨 / 同位体 / 亜鉛 / マグネシウム |
研究実績の概要 |
本研究では本州における縄文時代の人々の安定同位体分析を行うことで,縄文時代人の食性と性別を詳細に明らかにする。そのために最低限の試料から多数の同位体データを得るための前処理手法を検討する。そして亜鉛やマグネシウムなど新規性の高い金属元素の同位体分析を行うことで性別推定の高精度化や性別判定の手法の確立を目指す。得られたデータは考古学的な属性と合わせて検討を加えることで縄文時代の社会組織の解明に貢献することを最終的な目的としている。 本年度は,資料から亜鉛とマグネシウムの分離を行うために効率の良いイオン交換カラムの作成に取り組んだ。複数のイオン交換樹脂を使って,連続的に塩酸や硝酸を加えることで,どの分画でどの目的元素が溶出してくるのか,ICP発光分光分析装置(ICP-OES)を使って濃度を調べた。その結果,多元素混合溶液を試料として用いた場合にはうまく目的元素を分離することができた。しかし,CaやPの多い骨試料などは,それらが他の分画に溶出してくるために,さらなる実験手法の検討が必要であることが分かった。 昨年度までに,愛知県吉胡貝塚から出土した古人骨の歯試料それぞれ13点,ニホンジカの歯6点,イノシシの歯3点やタイ科の骨など6点,現生の植物6点である。今年度は,さらに現生のアサリ5点,カキ5点の資料から陰イオン交換樹脂を用いて亜鉛を抽出してICP-OESで濃度を測定した。亜鉛の同位体比を地球研のマルチコレクタ型ICP質量分析装置によって測定した。これらのデータを解析することで,古人骨の亜鉛同位体比が海産資源利用の評価に使えるかどうか検討を行った。この結果について論文を執筆中である。 また,現生のアサリ5点,カキ5点の資料について,マグネシウム同位体比の測定も行った。いまだ予備的な分析段階であるが,試料の抽出から同位体比の測定まで行うことができることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,ICP-OESの納品後の機器の立ち上げ作業を行った。基本的な元素濃度測定を行うことが可能であることを確認した。その後,試料の元素濃度測定を行い,カラム分離作業の検討や,亜鉛とマグネシウムの同位体比測定も行った。これらは当初の計画通り研究が進んでいることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,これまでに得られた亜鉛同位体比のデータを解析することで論文を公表する。また,目的元素を分離するためのイオン交換カラムの作成に取り組む。さらに,古人骨や動物骨などのマグネシウムの同位体比を測定する予定である。感染症対策により出張が不可となった場合でも分担者に試料を送付することで同位体測定が可能である。
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