研究課題/領域番号 |
20H01376
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
佐宗 亜衣子 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 助教 (10532658)
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研究分担者 |
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
水野 文月 東邦大学, 医学部, 講師 (50735496)
青野 友哉 東北芸術工科大学, 芸術学部, 准教授 (60620896)
水嶋 崇一郎 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (90573121)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 骨考古学 / 人骨出土状況 / 年代測定 / DNA分析 |
研究実績の概要 |
廃屋墓(はいおくぼ)は縄文中期に関東地方を中心に検出される、住居内に遺体を埋葬する特殊な葬法である。かつては出土人骨群は病気や事故により同時に死亡した、その住居の住人=“家族”であるとされ、縄文時代の家族関係や婚姻関係といった社会的組織を解釈する基盤となってきた。近年は何らかの関係をもつ個体をある程度の期間をおいて一つの廃屋に埋葬したとの考えが主流となっている。 本課題の目的は複数の個体が出土している廃屋墓例において、これらの個体間の生物学的な関係を明らかにすることである。廃屋墓の人骨群に遺伝的血縁関係や形態的類似性があるのか、同居していた“家族”とみなせるのか、人骨群は埋葬されたのか遺棄されたのかを問い、骨考古学、形態人類学、骨科学(DNA分析、年代測定、食性分析)的観点から科学的に分析し、親族関係と埋葬プロセスを明らかにしようと試みている。 本年度は東京大学収蔵の神奈川県三ツ澤貝塚、東京都千鳥窪塚、聖マリアンナ医科大学収蔵の千葉県西広貝塚、千葉県鎌ケ谷郷土郷土資料館収蔵の根郷貝塚の人骨について、個体の識別、標本の再整理・復元を行った。このうち、三ツ澤と千鳥窪の事例は、廃屋墓の事例として広く知られてきたたが、出土状況を精査すると一つの住居の床面から出土したといえない、との結論に達した。さらに人骨に残されたタフォノミー痕跡の分析、発掘記録からの出土状況の分析、理化学分析のサンプル採取部位の選定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度も引き続き(特に年度前半)、新型コロナ感染症の影響により他地域への移動や機関への立入りが制限または禁止され、計画に大幅な変更が必要となった。年度後半には、その状況がやや緩和され、十分ではないものの研究活動が行えるようになった。 研究対象の人骨資料を収蔵している各機関に赴き、データの収集や発掘記録、出土状況の写真などの調査を行うことができた。根郷貝塚人骨については、新型コロナ感染症の影響なく調査が行えるよう、千葉県鎌ケ谷市より借用して分析することとした。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は理化学分析の対象標本である神奈川県三ツ澤貝塚、東京都千鳥窪塚、千葉県西広貝塚、根郷貝塚の人骨について、出土状況や個体識別の確認作業を終える。その結果をもって、各個体からDNA分析、安定同位体分析、年代測定のためのサンプリングを行う予定である。姥山貝塚、加曾利貝塚、根郷貝塚の事例については、埋葬状況と人骨のタフォノミー痕跡を分析をすすめる。 また、本研究の成果を学会にて発表すべく、シンポジウムを企画している。
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