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2021 年度 実績報告書

総合資料学にもとづく古代アンデス文明の社会統合の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20H01377
研究機関東亜大学

研究代表者

鵜澤 和宏  東亜大学, 人間科学部, 教授 (60341252)

研究分担者 關 雄二  国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 教授 (50163093)
瀧上 舞  山形大学, 人文社会科学部, 学術研究員 (50720942)
江田 真毅  北海道大学, 総合博物館, 准教授 (60452546)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードアンデス文明 / 考古学 / 生物考古学 / 文化財科学 / 動物
研究実績の概要

本研究は、具体的に3つの課題を設定して実施している。第1課題は考古動物相の高精度同定、第2課題は家畜飼育開始時期と不平等社会出現の時差確認、第3課題は饗宴儀礼と食物連鎖を暗示する図像解釈の解明である。
昨年度に続き、今年度もペルーにおける現地が実施できなかったため、本研究課題に先行しておこなってきたプロジェクトで収集し、未分析であった資料を活用し、国内において研究を遂行した。また、海外研究者とのオンライン会議、ワークショップ開催等をおこなって、研究の進展をはかった。
今年度の主な成果は、第2課題として設定した初期ラクダ家畜の利用に関する問題について、着実な進展をみたことである。ペルー北部のアンデス高地において、紀元前800年から500年頃までにリャマ飼育が開始されたことは本研究課題によりすでに明らかにされていた。またリャマの導入が神殿の儀礼活動にもっぱら用いられていたことも判明している。今年度は、ペルー北部高地における初期リャマ家畜の利用を遺跡間で比較し、神殿社会における社会の複雑化過程と家畜開始の相関関係を検証した。その結果、当地域を代表するパコパンパ遺跡とクントゥルワシ遺跡で、リャマの利用に顕著な違いが確認され、リャマの飼育を担った集団との関係に相違があったことが示唆された。
こうした知見を、動物考古学、同位体化学など、学際的な分析によって確認して論文化した。研究代表者と研究分担者2名による合計4報の論文を含む成果論文が、Anthropological Science誌において特集号として発行したほか、さらに3報の論文を含む論集の出版を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定していたペルーでの現地調査を実施できなかったため、新たな発掘データおよび分析サンプルの入手が行えなかった。このため、本研究課題で解明を目指すとした研究の一部に遅れが生じている。一方で、本研究課題に先行しておこなってきた調査で収集したサンプルおよびデータの分析をすすめたことで、想定よりも大きな成果があがっている点もある。具体的には、古代アンデス社会における初期ラクダ家畜の利用と、社会の複雑化過程との関係に関する知見である。形成期アンデス社会において、リャマが神殿における儀を目的として導入されたことがすでに明らかになっているが、リャマ導入は各地域で一律に進行せず、それぞれの神殿社会がもつ社会的ネットワークにも影響を受けていたことが明らかになってきた。こうした新知見を複数の論文として発表しており、現地調査の遅れを考慮してもプロジェクト全体の成果は上がっていると評価する。

今後の研究の推進方策

海外渡航の制限が緩和されたきた。次年度においては、小規模であっても現地調査を実施できる見込みが得られている。現地調査をおこない、サンプルの採取、分析を着実に実施する。とくに研究課題(1)考古動物相の高精度同定については、現地調査においてサンプルが得られ次第、着手する。
本研究課題は研究代表者のほか3名の研究分担者で推進しているが、全員がペルーでの調査に参加できない場合は、現地とオンラインでコミュニケーションをとり調査を進めることとしている。また先行研究課題で収集したサンプルを活用し、国内での分析を継続する。
調査研究と並行して成果論文のとりまとめも進めており、複数の原著論文、書籍出版を予定している。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件) 図書 (2件)

  • [国際共同研究] Universidad Nacional Mayor de San Marcos(ペルー)

    • 国名
      ペルー
    • 外国機関名
      Universidad Nacional Mayor de San Marcos
  • [雑誌論文] Ritual consumption and sacrifice of llama (<i>Lama glama</i>) at the Pacopampa site in the Northern Highlands, Peru2021

    • 著者名/発表者名
      Uzawa Kazuhiro、Seki Yuji、Chocano Daniel Morales
    • 雑誌名

      Anthropological Science

      巻: 129 ページ: 109~119

    • DOI

      10.1537/ase.2104111

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Isotopic study of maize exploitation during the Formative Period at Pacopampa, Peru2021

    • 著者名/発表者名
      Takigami Mai、Seki Yuji、Nagaoka Tomohito、Uzawa Kazuhiro、Chocano Daniel Morales、Mukai Hitoshi、Yoneda Minoru
    • 雑誌名

      Anthropological Science

      巻: 129 ページ: 121~132

    • DOI

      10.1537/ase.210531

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Prevalence of dental caries and antemortem tooth loss at Pacopampa in an initial stage of social stratification in Peru’s northern highlands2021

    • 著者名/発表者名
      Nagaoka Tomohito、Seki Yuji、Uzawa Kazuhiro、Morita Wataru、Chocano Daniel Morales
    • 雑誌名

      Anthropological Science

      巻: 129 ページ: 165~185

    • DOI

      10.1537/ase.210505

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 権力分析の異なる位相―アンデス文明初期における威信財と社会的記憶―2021

    • 著者名/発表者名
      関雄二
    • 雑誌名

      季刊考古学

      巻: 35 ページ: 102-115

  • [雑誌論文] Preface to the special issue on Humans, Animals and Societies of Andean Civilization2021

    • 著者名/発表者名
      Seki Yuji
    • 雑誌名

      Anthropological Science

      巻: 129 ページ: 107~108

    • DOI

      10.1537/ase.210511

  • [学会発表] アンデス文明における神殿と都市2022

    • 著者名/発表者名
      関雄二
    • 学会等名
      新学術領域研究「西アジア都市」領域全体研究会 特別講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] ペルー北高地パコパンパ遺跡における防御遺構:インカと在地社会2022

    • 著者名/発表者名
      関雄二
    • 学会等名
      金沢大学超然プロジェクト「古代文明の学際研究の世界的拠点形成」成果報告会
  • [学会発表] ペルー北高地パコパンパ遺跡における偶蹄類の儀礼的消費2021

    • 著者名/発表者名
      鵜澤和宏、関雄二、ダニエル・モラーレス・チョカーノ
    • 学会等名
      第26回古代アメリカ学会研究大会
  • [学会発表] ナスカ文化の骨製縦笛の分析-年代測定と形態分析から-2021

    • 著者名/発表者名
      吉田晃章・江田真毅・松前ひろみ・粟野若枝
    • 学会等名
      2021年度アンデスコレクション研究懇談会
  • [学会発表] 鳥と古代人のトリドリばなし~ニワトリ・「鵜」と弥生人、地上絵の鳥とナスカ人~2021

    • 著者名/発表者名
      江田真毅
    • 学会等名
      群馬県立自然史博物館・企画展講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] アンデス文明初期におけるラクダ科動物飼育の検証 ―クントゥル・ワシ遺跡の 事例―2021

    • 著者名/発表者名
      瀧上舞, 鵜澤和宏, 井口欣也, 関雄二
    • 学会等名
      第11回同位体環境学シンポジウム
  • [図書] ラテンアメリカ文化事典2021

    • 著者名/発表者名
      ラテンアメリカ文化事典編集委員会
    • 総ページ数
      780
    • 出版者
      丸善出版
    • ISBN
      978-4-621-30585-0
  • [図書] アンデスの考古学 新版2021

    • 著者名/発表者名
      関 雄二
    • 総ページ数
      366
    • 出版者
      同成社
    • ISBN
      9784886218773

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公開日: 2022-12-28  

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