研究課題/領域番号 |
20H01385
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小林 茂 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 名誉教授 (30087150)
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研究分担者 |
大坪 慶之 三重大学, 教育学部, 教授 (30573290)
渡辺 理絵 山形大学, 農学部, 准教授 (50601390)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日清・日露戦争期 / 東アジア / 地図作製 / 気象観測 / 日本 / 西欧列強 / 淸国 / 朝鮮 |
研究実績の概要 |
西欧列強や日本の「帝国地図学」の範囲が拡大しつつも、日露戦争後に一部で三角測量による測量が開始されていた中国(清国)では、近代地図の作製は複雑な様相を呈していた。これについて、まず「帝国地図学」を展開していた列強諸国間の関係をみると、軍事的な対立にともなう地図情報の争奪だけでなく(ロシアと日本)、友好関係にもとずく地図情報の提供(ロシア→ドイツ)もみられることがあきらかになった。また中国側のナショナルな地図作製は、民国期になると大きく広がり、その成果を列強側が転用するのは日本だけでなく、のちに英国も行ったことが判明した。 この一方で、中央アジアにまで広がるロシアと中国(清国)の国境に注目すると、19西紀なかば以降その画定交渉が進行し、この末期になるとヨーロッパに派遣された公使が西欧側(ロシアにくわえイギリス)作製の関係地図を入手し本国に送るだけでなく、それらを加工した西欧風の地図を交渉に向けて作製するようになることが判明してきた。「中俄交界全圖」(1890年)がそれで、近代測量による国境図を作製できない中国(清国)が、こうした手法による地図を利用して、交渉に当たろうとしていたことがうかがえる。列強側の「帝国地図」に対する抵抗と考えられる地図作製で、この過程の検討を開始しすることとした。類似の「光緒勘定西北辺界俄文訳漢図」が1894年に刊行されたという点も注目された。 以上の一部は『外邦図研究ニューズレター』13号のほか、人文地理学会大会でも発表した。 以上のような作業を行いつつ、2021年度は翌年のアメリカ議会図書館での調査に期待することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス流行のため、本年度もアメリカ議会図書館での調査が実施できず、研究を展開させることが容易ではなかった。ただし、国内で入手できる資料の検討が進み、同館で調査すべき資料が明確になった点は大きな前進であった。
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今後の研究の推進方策 |
西欧列強や日本の「帝国地図学」の多彩な傾向と、それに対する中国(清国および民国)側の地図作製の具体的様相が見えはじめ、分析視角をさらに前進させることができたが、それによる研究の完成には、多彩な地図資料を収蔵するアメリカ議会図書館での調査が不可欠であることがますます強く意識されるようになった。 それにもとづき、旧知のミーンズ節子さん(同館地理・地図部のライブラリアン)にあらかじめ参照したい資料を連絡して、その探索を開始してもらうこととした。
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