研究課題/領域番号 |
20H01388
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤岡 悠一郎 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (10756159)
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研究分担者 |
伊藤 千尋 福岡大学, 人文学部, 准教授 (00609662)
手代木 功基 摂南大学, 国際学部, 講師 (10635080)
濱 侃 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 助教 (10851579)
八塚 春名 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (40596441)
福永 将大 九州大学, 総合研究博物館, 助教 (50847093)
飯田 義彦 筑波大学, 芸術系, 准教授 (90774802)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 採集林 / 人為植生 / 生業 / 植物利用 / 島嶼 |
研究実績の概要 |
2022年度は本科研研究の3年目にあたり、全体期間の折り返しにあたる年である。本年度は、集中調査地等のフィールドでのデータ収集に力を入れるとともに、全体の成果公表に向けた成果の取りまとめを進めた。 集中調査地の一つとして設定した新潟県佐渡島において共同調査を実施した。同地域では、トチノキの巨木から構成される採集林が形成されていることがこれまでに明らかになっており、それらの林分を対象とした植生調査とトチノミの利用や山林利用に関する住民へのインタビュー調査を実施した。また、ドローンによる林分の撮影を行い、空中写真からトチノキの抽出を試みた。これらの調査の結果、佐渡島中部における採集林の構造とその形成要因に関する一連のデータセットを入手した。 さらに、採集林の一種であるトチノキ林が集中して分布していることが判明している中国地方において、新たな事例地を探すために鳥取県智頭町において現地調査を実施した。インタビューや現地監察の結果、同地域においてもトチノキ採集を実施する文化が根付いており、同地域にトチノキが密に生育するトチノキ林が形成されているという情報を得た。同地域においては、次年度に集中的な調査を実施する計画である。 3月には、前年度に続き、琉球諸島の慶良間諸島の一角に位置する座間味島において、ヤマモモ林とヤマモモの採集活動に関する集中調査を実施した。同地域においてコドラートを設定し、毎木調査を実施するとともに、現地の住民に対するインタビュー調査を実施し、採集林の形成要因等に関する知見を得た。 本研究の成果として、月刊『地理』誌(古今書院)に特集企画を掲載した。本科研の分担者および同分野の研究を実施している研究者によって2本の論文と7本の事例報告を刊行した。同誌は地理学分野の研究者とともに一般市民向けに刊行されている雑誌であり、本科研の成果のアウトリーチとしても位置付けられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
集中調査地での共同調査を複数回実施することができ、採集活動や採集林に関する自然環境に関する情報と社会環境に関する情報の両方のデータを予定通りに入手できている。また、古今書院発行の月刊『地理』誌に採集林の特集企画を組むことができ、本科研メンバーが中心となって9本の論考を発表することができた。これらの論考の中には、地理学分野の成果のみならず、文化人類学やリモートセンシング、考古学などの分野の研究者による論考も含まれており、学際的な内容となっている。本科研の目的に沿った意義のある成果として位置づけられよう。上述の点に鑑み、本科研の進捗としては、「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度が最終年度となるため、引き続き集中調査地を中心に採集林や採集活動に関するデータ入手を進め、成果の取りまとめにつとめる予定である。特に、これまでにデータを取得している地域においても最終的な調査を実施し、論文として成果が公表できるよう、必要な情報を収集する。 また、採集林の事例を引き続き広く収集し、その定義や射程などを多角的に検討していきたい。これまでにも研究会などで分担者など領域内部の意見交換は実施してきたが、本概念を関連する研究分野の研究者に紹介し、意見交換を進めていく。さらに、異分野の研究結果を相互参照し、採集林に関する総合的な知見を得られるように、研究会や成果発信の方法を模索する予定である。 本科研終了後における研究の展開についてもメンバー間で議論を深め、その後の研究枠組みについても検討を進める。
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備考 |
本科研研究の成果公開用のwebページを作成した。
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