研究課題
青森県弘前市立図書館に所蔵されている「弘前藩庁日記」には、1705年~1860年の十三湖における毎年の結氷・解氷日が記録されているが、今年度はその連続記録を精査して長期変動を明らかにするとともに、同じく弘前藩庁日記から読み取った降雪日数の降水日数に対する割合(降雪率)との関連を検討考察した。さらに、冬春季の気温と相関が高い桜(京都)の満開日時系列(Aono and Kazui, 2008) との比較を試みた。その結果、1740年代と1820年前後に、結氷期間と降雪率、桜満開日がともに低下した時期があり、一時的な温暖期と考えられること、また、1830年代には、上記の3指標が上昇して寒冷のピークに達していることが明らかになった。1820年前後の冬春季の一時的な温暖期については、これまで指摘されたことがなく、注目に値する。さらに、日本の過去の降雪データを用いて、降雪率(降雪日/降水日)の長期変化を調べ、日本海側の冬季降雪深変化の主要要因の一つであることを確認した。一方で、降雪深変動には、降水量も大きく関わっている。また、それらは、地域的な特徴も見られ、今回解析した1961年以降では、北陸地方は、降雪率の減少と降水量の減少が見られ、顕著な降雪深の減少を示す一方で、東北地方は、降雪率の減少と降水量の増加が打ち消し合うことで、変化傾向が不明瞭となっていた。また、過去の変動の要因を理解するために、領域気候モデルでの降雪量の年々変動の予備実験に着手した。次に、諏訪湖の結氷・御神渡り記録の詳細を原典並びに同時期の日記記録から再度確認し、これまで知られていなかった新たな期日を発見した。以上の成果を踏まえ、複数の国際学会で発表した。
2: おおむね順調に進展している
諏訪湖、十三湖の長期結氷記録を精査するとともに、降雪率との関係に関する解析や、領域気候モデルによる降雪量の年々変動の予備実験に着手できたため。
今後は、データ解析(諏訪湖、十三湖の結氷記録と降雪率の分析)と領域気候モデルによるシミュレーションとを併用して、冬春季気候変動のメカニズム解明に向けた研究を推進する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 8件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
International Journal of Climatology
巻: 41 ページ: 2316-2329
10.1002/joc.6960
Climatic Change
巻: 164 ページ: 1-19
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https://jcdp.jp/