研究課題/領域番号 |
20H01390
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
高岡 貞夫 専修大学, 文学部, 教授 (90260786)
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研究分担者 |
苅谷 愛彦 専修大学, 文学部, 教授 (70323433)
佐々木 明彦 国士舘大学, 文学部, 准教授 (20608848)
泉山 茂之 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (60432176)
東城 幸治 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (30377618)
齋藤 めぐみ 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (40455423)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジオダイバーシティ / 生物多様性 / 高山地域 / 野生動物 / 進化生態学 |
研究実績の概要 |
北アルプスの標高1500m以上の地域を対象に、山地性の池沼および隣接する環境の成立条件を系統的に把握するため、GIS分析とリモートセンシングによる解析を行った。その結果、地域内には古い大規模地すべり地形が卓越し、これらの地形が池沼や植生分布の多様性をもたらすが、この地形の効果には気温や積雪量の違いを背景とした地域的な特徴があることが明らかになった。 梓川上流域と周辺域を対象に実施する調査では、高山帯・亜高山帯に点在する59ヶ所の池に生息する種を含む様々な水生昆虫群集が確認された。各池の環境因子に関するデータを測定し、GISデータとともに解析し、それぞれの池と異なる標高帯に生息する水生昆虫群集の種多様性(α多様性、β多様性)を評価した。そのうえで、これらの群集構造の特徴と類似性は、池の環境因子と関連性があることが明らかになった。 大規模地すべり地内の諸環境と生物群集の関係に関する調査は、八方尾根地域と鳳凰山地域で実施した。八方尾根地域では、地すべり地内には微地形に対応して広葉樹林、針葉樹林、ササ草原、湿性草原、岩塊地など、多種の植生が混在する。EC、pH、水温の計測結果によると、地すべり地内に点在する池沼には主に降水や融雪水によって涵養されるものと主に湧水によって涵養されるものが存在した。地すべり移動体上に生じた小凹地では掘削調査を行い、得られた長さ239 cm のコアの記載と年代測定から約 4270 cal BP 以降の地形変化と環境変化を推定した。斜面が安定化した約1330 cal BP 以降に現在見られる植生が成立し、その後存続してきたと推定された。また、八方尾根、鳳凰山の両地域で自動撮影カメラを設置し、地すべり地内の池沼や岩塊地が大型・中型哺乳類や両生類によってどのように利用されているのか記録した。池沼の規模や水位の安定性が動物の利用形態と関係していることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍下において教育面等における学内業務のオンライン化の負担が大きかったほか、県をまたぐ移動の制限や野外調査の協力者を十分に確保することが難しかったことなどにより、予定していた野外調査の一部を縮小せざるを得なかった。しかし、必要最低限のデータ取得は実施できており、またGISによる解析には一定の前進をみることができた。文献研究によるジダイバーシティ概念の再検討も順次進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
各調査地の植生構造は、動物の池沼利用に対する間接的な影響が小さくないと考えられる。現地でのさらなる記録を行いながら、植生構造の分析を進める。珪藻類については分類群の同定がほぼ完了し、今後は群集構造の分析や環境因子との関係を進めていく。哺乳類に関しては自動撮影カメラによるデータを蓄積し、哺乳類の環境利用の特性が分析できるようにしていく。これまでの研究成果のうち、内容的に充実している項目から順に論文公表のための準備を行っていく。
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