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2021 年度 実績報告書

ムスリム社会におけるマスラハ(福利)の実践―弱者の権利をめぐる比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 20H01415
研究機関桜美林大学

研究代表者

堀井 聡江  桜美林大学, リベラルアーツ学群, 教授 (20376833)

研究分担者 村上 薫  独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター ジェンダー・社会開発研究グループ, 研究グループ長代理 (00466062)
岩崎 えり奈  上智大学, 外国語学部, 教授 (20436744)
小野 仁美  東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (20812324)
細谷 幸子  国際医療福祉大学, 成田看護学部, 教授 (60516152)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードマスラハ(福利) / シャリーア(イスラーム法) / 弱者の権利
研究実績の概要

エジプト:昨年度に引き続き西部砂漠のオアシスを例とする農村の持続的発展に関する調査を行った。同地域には20世紀後半から技術と資本が投入されてきたが,塩害の深刻化や地下水位の低下など水資源への影響が深刻化するなかで,政府の水資源政策だけでなく,農家の資源利用・開発にも変化が現れていることが明らかとなった。
イラン:イスファハンでのアンケート・インタビュー調査に基づき,サラセミア患者の婚姻・出産行動を分析し,患者が婚姻や出産を断念するケースにおいては遺伝子の特徴,不妊症,特別な治療の要否等の身体・健康状態だけでなく,社会的な圧力が大きいことが明らかとなった。
チュニジア:同国の最高位ウラマー(イスラーム学者)にして改革主義者として知られるイブン・アーシュール(1879-1973年)の立場を再考し,男女平等を唱えると同時に,イスラーム的伝統を近代的に再解釈する形で夫婦間における性別役割分業を理想とするジェンダー規範を唱道したことを明らかにした。
トルコ:不妊治療の現状について調査した。同国は「結婚して親になることで1人前」という価値観が強く,世界的に見ても不妊治療が盛んである。不妊に対する社会的なタブー視は以前強い反面,不妊治療の普及を通じて,不妊に対する意識の変化も見られることが明らかとなった。
イスラーム法学:訴訟法における権利の可及的な保護という観点からの既判力の概念の発達を明らかにした。従来の研究はイスラーム法学における既判力の存在に否定的であったが,マムルーク朝期には当事者およびその権利承継者の権利保全のための判決手法が議論され,その一環として既判力の概念が高度に発達したことを論証した。
また計3回の研究会を実施し,「トルコの福祉国家―制度と視点」(村上),「イランにおける慈善活動と寄付」(細谷),「イスラーム法学におけるザカート(相互扶助税)」(堀井)に関する報告が行われた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナ禍により海外調査や外国人研究者の招聘が不可能な時期があっため,当初の計画に若干の変更が生じたが,修正後の計画に沿って所期の成果を挙げつつある。

今後の研究の推進方策

エジプト,チュニジア,トルコ,イラン(または在英イラン人の活動)とイスラーム法学に関する各担当者による個別の調査・研究を進めつつ,国際シンポジウム(9月)と出版物によりその成果の総括を目指す。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] イスラーム家族法とフェミニズムーチュニジアの相続規定をめぐる多様な立場2021

    • 著者名/発表者名
      小野,仁美
    • 雑誌名

      史苑

      巻: 82 ページ: 79, 94

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The Concept of Family in the Thought of Ibn Ashur: Islamic Traditions and Modern Patriarchy2021

    • 著者名/発表者名
      Ono, Hitomi
    • 雑誌名

      Orient: Journal of the Society for Near Eastern Studies in Japan

      巻: 56 ページ: 69, 90

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Wishes, Choices and Experiences in Marriage and Reproduction of People with Genetic Diseases: An Example of People with Thalassemia Major in Iran2021

    • 著者名/発表者名
      Hosoya, Sachiko
    • 雑誌名

      Ars Vivendi Journal

      巻: 13 ページ: 2, 27

    • 査読あり
  • [雑誌論文] スンナ派イスラーム法学における既判力論争の展開―マムルーク朝期を中心に―2021

    • 著者名/発表者名
      堀井,聡江
    • 雑誌名

      西南アジア研究

      巻: 93 ページ: 1, 23

    • 査読あり
  • [学会発表] エジプト西部砂漠オアシス社会における農家戦略としての沙漠・地下水開発2021

    • 著者名/発表者名
      岩崎,えり奈,柏木,健一
    • 学会等名
      第32回日本砂漠学会
  • [学会発表] イスラーム家族法とフェミニズムーチュニジアの相続規定をめぐる多様な立場2021

    • 著者名/発表者名
      小野,仁美
    • 学会等名
      2021年度立教大学史学会大会 公開講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] イランのろう者 手話に関する情報2021

    • 著者名/発表者名
      細谷,幸子
    • 学会等名
      イラン学会
  • [学会発表] 効果判決と有効判決―イスラーム訴訟法における既判力―2021

    • 著者名/発表者名
      堀井,聡江
    • 学会等名
      日本中東学会第37回年次大会
  • [学会発表] 『親になって一人』とのつきあい方ー不妊治療が映し出す夫婦のかたち2021

    • 著者名/発表者名
      村上,香
    • 学会等名
      「現代中東地域研究推進事業」全拠点主催シンポジウム「現代中東理解のための5つの視角」
  • [図書] オスマン民法典(メジェッレ)の研究:訴訟編・人証及び法廷宣誓編・司法編2022

    • 著者名/発表者名
      大河原,知樹,堀井,聡江,シャリーアと近代研究会
    • 総ページ数
      91
    • 出版者
      東北大学大河原知樹研究室
    • ISBN
      9784600009960
  • [図書] Sustainable Water Solutions in the Western Desert, Egypt: Dakhla Oasis.2021

    • 著者名/発表者名
      Iwasaki, Erina, Abdelazim, Negm, Salwa, Elbeih eds.
    • 総ページ数
      283
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      9783030640057

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公開日: 2023-12-25  

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