研究課題/領域番号 |
20H01415
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
堀井 聡江 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 教授 (20376833)
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研究分担者 |
村上 薫 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター ジェンダー・社会開発研究グループ, 研究グループ長代理 (00466062)
岩崎 えり奈 上智大学, 外国語学部, 教授 (20436744)
小野 仁美 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (20812324)
細谷 幸子 国際医療福祉大学, 成田看護学部, 教授 (60516152)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マスラハ(福利) / シャリーア(イスラーム法) / シャリーアの目的 / 家族 / ジェンダー / 貧困 |
研究実績の概要 |
マスラハ(福利)の実践に関するエジプト(岩崎),チュニジア(小野),トルコ(村上),イラン(細谷)における本格的な現地調査を再開し,イスラーム法学研究(小野・堀井)と併せて下記の成果を得た。まずエジプトについては,「アラブの春」からコロナ禍を経て同国の経済が悪化の一途を辿る中での都市の貧困層の拡大に着目し,特に同国を含む多くの中東・アフリカ諸国で社会福利的政策の根幹をなす食糧補助金制度改革がこれらの層に与える影響について調査した。 チュニジアについては,ムスリム諸国で最も進んだ同国の家族法の法制史的な意義と,古典イスラーム法学におけるマスラハ理論を発展させたイブン・アーシュール(1879-1973)の「シャリーア(イスラーム法)の目的」論が,家族法改革を含む法の近代化に与えた影響に関する国際シンポジウムを開催した。また,23年度中に「子どもの権利条約」に基づく子どもの利益の保護に関する法的制度とその課題に関する日本とチュニジアの国際比較シンポジウムを開催するための準備を開始した。 トルコについては,同国における生殖医療の発展と適齢期の女性の「妊活」の現状を調査し,これに対する家族・ジェンダー規範の影響を他のアジア諸国とも比較しつつ考察した。 イランについては,コロナ禍で献血が減少している現状,およびエスファハーンろう者家族協会で実施した質問紙調査に基づく障がい者の経済的困窮を明らかにした。 イスラーム法学研究においては,23年度のシンポジウムのため,イスラーム法における子どもとその福利について整理した。また,イスラーム司法における権利救済の仕組み,特に既判力の理論の歴史的発達について総括した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イランについてはややまだ制約があるものの,他の対象地域では現地調査を本格的に再開でき,メンバー各自が研究を進め,その成果も上がっている。子どもの権利に関する日本とチュニジアの国際比較シンポジウムの開催は当初の計画より遅れたものの,23年度には滞りなく開催できる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,エジプト(岩崎),チュニジア(小野),トルコ(村上),イラン(細谷)に関する現地調査を進め,これにイスラーム法学研究(小野・堀井)に基づく考察を加えつつ,マスラハ(福利)が近代的な諸概念とどのように関連づけられつつ「実践」されているのかを考察する。来年度が最終年度であるため,上記のシンポジウムを開催するとともに,これまでの成果の総合に努めたい。
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