研究課題/領域番号 |
20H01425
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岡田 陽平 神戸大学, 国際協力研究科, 准教授 (30760532)
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研究分担者 |
若狭 彰室 東京経済大学, 現代法学部, 准教授 (00780123)
田中 佐代子 法政大学, 法学部, 教授 (20709323)
二杉 健斗 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 准教授 (30824015)
新倉 圭一郎 東京都立大学, 法学政治学研究科, 准教授 (70803146)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国家責任 / 行為帰属 |
研究実績の概要 |
2022年度は、本件研究プロジェクトの3年目にあたり、特に国家責任条文11条に着目し、そこに反映された規則が、真に行為帰属を規律するものかどうかについて検討した。 国連国際法委員会(ILC)によって起草された国家責任条文は、その第1部第2章に「行為の国への帰属」に関する8つの条文を置いており、その最後に位置する11条は、「前条までの規定に基づいて国に帰属しない行為であっても、当該国がその行為を自らのものとして認知しかつ採用する(acknowledges and adopts)場合には」当該国の行為とみなす旨を定める。 まず本研究は、行為帰属とは、国と行為者との間の受任(agency)関係の存否を確定する法的作業であるということを明らかにした。そして、この関係を基礎づけるリンク(複数存在する)に応じて帰属基準が成立しており、これら基準が国家責任条文4条以降に定められているといえる。しかし11条は、行為実行時の受任関係の不存在にもかかわらず、国の事後的な認知・採用により、当該行為を遡及的に帰属させるという意味において、異質な規則である。これが国家責任条文に導入される契機となったのは、国際司法裁判所(ICJ)米国大使館員人質事件判決であったが、同判決は11条にいう認知・採用基準により帰属が認められた先例ではないことが明らかとなった。 しかし近年、11条を実際に適用する裁判例がみられる(欧州人権裁判所Makuchyan事件判決等)。しかし、これら裁判例を詳細に分析したところ、11条に基づいて帰属が肯定される事案はほぼ想定しえず、かろうじて想定しうる事案も、行為帰属ではなく、禁反言法理の適用によって処理されるべきものであるとの結論が得られた。かくして、認知・採用が慣習国際法上の行為帰属基準として成立しているとは評価できない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に開始した本件課題に関する研究は、当初計画の後ろ倒しを余儀なくされたものの、オンラインツールの活用などを通じて、後半2年間(2022年度および2023年度)はおおむね順調に進めることができた。海外での資料収集や研究報告が十分に実施できたとはいえないものの、国際法学会での研究報告や国際法関連雑誌への論文掲載(日本語および英語)というかたちで研究成果の公表に至ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
R5年度(本件課題の最終年度)に予定していた作業と並行して、本件課題に関する研究成果をまとめる。具体的には、国際ジャーナルへの投稿を行い、英語論文というかたちでの公表を目指す。
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