研究課題
最終年度においては、2つのテーマを中心に研究を遂行した。1つは、地域医療における臓器移植の実践的課題の検討である。具体的には、まず沖縄県を対象として、琉球大学医学部・消化器・腫瘍外科学講座(第一外科)及び沖縄県保健医療福祉財団への訪問調査を実施した。さらに、香川県を対象として、県庁の健康福祉部医務国保課・医事・総務グループでの同様の調査を行った。これらの調査では、県の移植状況とともに、地域ならではの問題点、臓器移植ネットワークのコーディネーターと、県職員としてのコーディネーターとの連携といった諸事情を知ることができた。もう1つは、2019年に臓器移植法を改正し、提供意思に関するOpt-outシステムを導入したイギリスでの調査である。これに関しては、NHS(国民保健サービス)の担当者、ならびに臓器移植普及団体であるLive Life Give Lifeの理事らに対するインタビューを実施し、法改正の経緯とともに、提供数増加のためには、意思表示についての法形式だけでなく、一般市民、特に若年層に対する教育・啓発活動が極めて重要であるとの知見を得ることができた。以上の訪問調査を踏まえて、今後のわが国の臓器移植法・法政策のあり方を検討した。近年、脳死体からの提供数が微増にとどまるとともに心停止後の提供数が減少するという傾向が続いているが、提供意思表示の機会を増加するとともに、潜在的な提供意思表示を医療関係者・コーディネーターらが適切に汲み取るための方策が求められることが明らかになった。また、特に知的障害者・小児らの意思決定支援システムの構築が急務であるとの結論も得られた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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