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2020 年度 実績報告書

ロールズ政治哲学と政治・経済思想:21世紀のリベラリズムをめざして

研究課題

研究課題/領域番号 20H01446
研究機関東京大学

研究代表者

宇野 重規  東京大学, 社会科学研究所, 教授 (00292657)

研究分担者 宮本 雅也  早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (20802086)
犬塚 元  法政大学, 法学部, 教授 (30313224)
加藤 晋  東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (30553101)
野原 慎司  東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 准教授 (30725685)
網谷 壮介  獨協大学, 法学部, 准教授 (30838272)
高見 典和  東京都立大学, 経営学研究科, 准教授 (60708494)
井上 彰  東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80535097)
馬路 智仁  東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80779257) [辞退]
田畑 真一  東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員 (90634767)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードロールズ / 政治哲学 / 政治思想 / 経済思想 / リベラリズム
研究実績の概要

プロジェクトの初年度にあたる本年度は、宇野・井上・加藤による調整の上、政治哲学班、政治思想史班、経済思想班合同で研究会を開始し、問題意識の共有をはかった。
この目的の実現のために選んだテキストが、K. ForresterのIn the Shadow of Justice: Postwar Liberalism and the Remaking of Political Philosophy, Princeton University Press, 2019である。Forresterは批判理論系のintellectual historyを専門とする研究者であるが、政治学(史)、経済学(史)、国際関係論、社会学、そして哲学に至る幅広い知識を活用して、ロールズおよびロールズ主義の思想史を紐解いている。同書を共に読むことで、ロールズの政治哲学を専門とする研究者とそうでない研究者、政治哲学研究者と政治思想史研究者、さらに経済思想研究の間でのロールズ理解の異同を確認し、多様なアプローチを総合する本プロジェクトの方向性を検討した。特に第4章(井上担当)、第5章(馬路担当)、第7章(田端担当)、第8章(宮本担当)については、担当者を決めて1回に1章ずつ読み進め、計4回の研究会を開催した。
Forresterの①ロールズの正義論が戦後アメリカのリベラリズムの流れの中で形作られたものであること、②ロールズの政治哲学がアメリカの主要な政治的イデオロギーとして継承された反面、良心的不服従、人種問題、国際政治などの現実政治の諸問題とは一定の距離を置くことになったという二つの仮説を検討することは、ロールズ政治哲学の思想史的理解を発展させる上で非常に有益であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

多くの研究会を開催し、すべての研究分担者が参加して、ロールズ政治哲学の思想史的理解に努めたことは極めて実り多かった。特にロールスの「正義の二原理」の根幹を構成する概念である平等と自由が、政治思想の長い歴史的伝統の下に正当化されていると同時に、戦後アメリカの政治思想の潮流、特にリベラリズムの展開の深い影響を受けたものであることが明らかになったことは、今後のプロジェクトの発展に向けての大きな一歩であった。また公民権運動や人種問題、さらにアメリカをめぐる国際政治など同時代的背景を確認することで、ロールズ政治哲学がどの問題を取り上げ、どの問題を捨象しているかについて確認することができた。ロールズの哲学的議論の内部からだけではわからない視座を得ることにつながったと言える。
その一方で新型コロナウィルスの感染拡大によって、海外から研究者を招聘してシンポジウムを開催するという当初の予定は延期になった。また、ロールズ・アーカイブに出張して、ロールズ政治哲学の形成過程を探るという調査計画も不可能になった。以上により、計画を大きく変更することを余儀なくされたが、オンラインによる海外研究者との意見交流等によって、ある程度、これを補うことができたと言える。

今後の研究の推進方策

今後についても、新型コロナウィルスの感染拡大状況について予測がつかないため、海外研究者を招いてのシンポジウムの企画を引き続き計画すると同時に、ロールズ・アーカイブ調査の可能性を模索する。
その一方で、引き続き海外渡航が制限されることも予想して、国内でできる新たな研究のアプローチを考える。引き続きオンライン研究会を開催すると同時に、ロールズをはじめとする現代政治哲学者たちがいかなる思考実験を行なっているか、網羅的な調査を行いたい。そのために大学院生を雇用し、政治哲学における思考実験のデータベースの構築に努める。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 図書 (5件)

  • [雑誌論文] Making the Veil of Ignorance Work: Evidence from Survey Experiments2020

    • 著者名/発表者名
      Akira Inoue, Masahiro Zenkyo, and Haruya Sakamoto
    • 雑誌名

      Oxford Studies in Experimental Philosophy

      巻: Vol. 4 ページ: 1-29

    • DOI

      10.31234/osf.io/yx58s

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The British Commonwealth as Liberal International Avatar: With the Spines of Burke2020

    • 著者名/発表者名
      Tomohito Baji
    • 雑誌名

      History of European Ideas

      巻: 46(5) ページ: 649-665

    • DOI

      10.1080/01916599.2020.1746084

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 正義論における規則と実践2020

    • 著者名/発表者名
      加藤晋
    • 雑誌名

      社会科学研究

      巻: 71(1) ページ: 5-20

    • DOI

      10.34607/jssiss.71.1_5

  • [学会発表] How Can We Accept “OUR” Decisions? An Experimental Study on Lottocracy, Epistocracy, and Democracy2020

    • 著者名/発表者名
      井上彰・秦正樹
    • 学会等名
      日本政治学会
  • [図書] The International Thought of Alfred Zimmern: Classicism, Zionism and the Shadow of Commonwealth2021

    • 著者名/発表者名
      Tomohito Baji
    • 総ページ数
      245
    • 出版者
      Palgrave Macmillan
    • ISBN
      978-3030662134
  • [図書] 平等の哲学入門2021

    • 著者名/発表者名
      網谷壮介
    • 総ページ数
      86-100(総ページ数391)
    • 出版者
      社会評論社
    • ISBN
      9784784515882
  • [図書] 民主主義とは何か2020

    • 著者名/発表者名
      宇野重規
    • 総ページ数
      277
    • 出版者
      講談社
    • ISBN
      978-4-06-521295-0
  • [図書] 知のフィールドガイド-異なる声に耳を澄ませる-』2020

    • 著者名/発表者名
      井上彰
    • 総ページ数
      51-64(総ページ数202)
    • 出版者
      白水社
    • ISBN
      9784560097564
  • [図書] ハーバーマスを読む2020

    • 著者名/発表者名
      田畑真一
    • 総ページ数
      25-51(総ページ数322)
    • 出版者
      ナカニシヤ出版
    • ISBN
      9784779515125

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公開日: 2022-12-28  

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