研究課題/領域番号 |
20H01465
|
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
篠田 英朗 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (60314712)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 国際安全保障 / パートナーシップ平和活動 / 国連 / PKO / 集団的自衛権 / 集団安全保障 / 法の支配 / 地域機構 |
研究実績の概要 |
本研究「国際安全保障の協働化/分業化:アフリカにおけるパートナーシップ平和活動の比較」では、国際安全保障における協働化/分業化の状況を分析するため、アフリカに展開する国際平和活動の調査・比較を行っている。国連と地域機構・準地域機構が協力して行うパートナーシップ国際平和活動は、アフリカでのみ発展している。なぜ、そのような変容がアフリカでのみ起こるのか。この核心的な問いに答えるために、本研究は、国際安全保障の協働化/分業化の仕組みに着目して研究を進めてきている。国連PKOが遂行できない武力行使を伴う活動をアフリカでは(準)地域機構が担うことができるため、パートナーシップ平和活動はアフリカでのみ進んできた、という仮説を検証する。主要なアフリカの国際平和活動に焦点をあてて、理論・組織・情勢分析を通じて、国際安全保障の協働化・分業化を解明することを試みている。海外調査が計画通りに進められなかったため、文献調査に特化して文献を収集し、分析した。その成果は、先行的な形で、公表している。特に焦点をあててきたのは、集団安全保障と集団的自衛権という国際法上の二つの制度が交錯する地点として国連と(準)地域機構のパートナーシップ平和活動を捉える理論研究の作業である。多元的な国際の平和と安全の維持に寄与する制度の柔軟な運営が、現在の世界の安全保障上の課題に対して持つ意義を整理している。集団安全保障と集団的自衛権の二つの異なる制度は、現代国際社会では、一つの共通の安全保障上の関心を持って連続性を持っている。連続性は、アフリカにおいて最も劇的に発達していることを明らかにする。この問題関心を探求するにあたって、国際的な法の支配の枠組みを精緻化する必要性にも迫られ、国際人道法の規範性の共有の度合いの影響についても着目して研究している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外聞き取り調査を実施できなかったことは、研究計画の実施に不足を生み出した。ただしオンラインによる面談や会合出席の機会を積極的に持っていくことによって、最大限に不足を補う努力は行った。文献調査を通じた理論的枠組みの精緻化については、目に見えた進展があった。国際的な法の支配の広範な枠組みの視点から、パートナー国際平和活動を捉える試みについては実績を重ねている。その成果は、『パートナーシップ国際平和活動: 変動する国際社会と紛争解決』(勁草書房)にまとめて、2021年度に公刊した。その他、「Preventive Diplomacy in Northeast Asia: How the Region without Operational Regional Organizations Pursues Peace」、「スレブレニツアァと『文民保護』の現在-憲章7章の柔軟運用と地域機構の役割」長有紀枝(編)『スレブレニツァ・ジェノサイド:25年目の教訓と課題』(東信堂)、「国際紛争の全体図と性格―紛争解決と地政学」北岡伸一・細谷雄一(編)『新しい地政学』(東洋経済新報社)、『紛争解決ってなんだろう』(ちくまプリマー)なども、本研究の基礎的理論構築の活動の成果であると言える。学会報告では、「深刻な⼈権侵害に対する「標的制裁」:国際立憲主義の観点をふまえて」2021年度国際法学会大会(2021年9月7日)、「国際平和活動と国際立憲主義」グローバル立憲主義研究会(2020年12月5日)、「パートナーシップ平和活動と重層的な国際安全保障体制」日本国際政治学会(2020年10月25日)などがある。
|
今後の研究の推進方策 |
精緻化した理論研究の枠組みを活かしていく研究成果の公表を続けると同時に、最大限に不足している海外聞き取り調査を補う出張を行う。各種英文・和文の論文を執筆しづけると同時に、英字単行本の刊行を急ぐ。理論研究面では、国際人道法の枠組みを視野に入れた国際安全保障体制とパートナーシップ国際平和活動のあり方を捉え直す視点の精緻化を確立する。同時に、変転する国際情勢をふまえた視点の導入も取り込んでいく必要性はある。具体的には、ソマリアにおけるAfrican Union Mission in Somalia (AMISOM)のAfrican Union Transition Mission in Somalia (ATMIS)への転換は、パートナーシップ平和活動の観点から重要な事例となった。マリにおけるMission Multidimensionnelle Intgree des Nations Unies pour la Stabilisation au Mali (MINUSMA)に対する政治変動の影響も大きく、新たな展開が検討されていることも、パートナーシップ国際平和活動の観点からは、重要である。聞き取り調査を踏まえた現場感覚のある現状把握に努めると同時に、理論的な含意の重要性を学術的に精緻化していく作業も包括的に行い、本研究の最終成果へとつなげていく。
|