研究実績の概要 |
本研究計画の目的は,電子化や公開が進む画像資料・史料を機械学習・画像処理技術を用いて計量分析に活用し,「データとしての画像」というアプローチに基づく,新たな実証的知見を提示することにある。具体的には,(1)航空写真・地図・衛星画像 (e.g., 植民地の鉄道敷設・行政地図,近年の衛星画像)を機械学習・画像処理技術で処理し,サブナショナルな単位で植民地期のインフラ投資等をデータ化する。次いで,(2)作成したデータと統計的因果推論の手法により,(a)「歴史的現象の決定要因」(e.g., 植民地統治の地理的拡大の決定要因),(b)「歴史的現象 の長期的影響」(e.g., 植民地期投資の現在の経済発展への影響),(c)「現代的現象の短期的影響」(e.g., 国境付近の「緩衝地帯」の設定の, 内戦の地理的展開への影響)と,(d)その背後に働く因果メカニズムを明らかにする。
これまでの具体的な成果として,Journal of Peace Research誌に論文が掲載された。また,過去の武力紛争や政治的暴力,奴隷貿易といった歴史的現象の長期的影響を扱った他の論文も,掲載には至っていないものの,学術誌への投稿に至った。また,Journal of Peace Research誌に掲載された論文は,Journal of Peace Research Best Visualization Award 2021を受賞した。来年度以降も,既に投稿に至っている論文の公刊や新たなデータ作成と分析を中心に,研究計画を進める。
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