研究実績の概要 |
本研究計画の目的は,電子化や公開が進む画像資料・史料を機械学習・画像処理技術を用いて計量分析に活用し,「データとしての画像」というアプローチに基づく,新たな実証的知見を提示することにある。具体的には,(1)航空写真・地図・衛星画像(e.g.,植民地の鉄道敷設・行政地図,近年の衛星画像)を機械学習・画像処理技術で処理し,サブナショナルな単位で植民地期のインフラ投資等をデータ化する。次いで,(2)作成したデータと統計的因果推論の手法により,(a)「歴史的現象の決定要因」(e.g.,植民地統治の地理的拡大の決定要因),(b)「歴史的現象の長期的影響」(e.g.,植民地期投資の現在の経済発展への影響),(c)「現代的現象の短期的影響」(e.g.,国境付近の「緩衝地帯」の設定の,内戦の地理的展開への影響)と,(d)その背後に働く因果メカニズムを明らかにする。
具体的には,今年度は(1)新たなデータの作成とそれを用いた実証分析,(2)サーベイ実験を用いた実証分析,および(3)次年度実施予定の国外でのサーベイ実験の準備をそれぞれ進めることができた。特に(1)については,従来実証研究での活用が進んでいなかった,ベトナム戦争期における米軍による枯葉剤散布記録と関連データを整備し,それを用いた実証分析を進めることができた。また,これまで延期していた(3)についても海外渡航が容易となったことで年度内に進めることができ,現在のベトナムにおけるサーベイ実験と(1)のデータとを組み合わせた,新たな分析に取り組む目処がたった。
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