研究課題/領域番号 |
20H01479
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山田 克宣 近畿大学, 経済学部, 准教授 (80533603)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会効用 / 情報介入 / 政策デザイン / self image / social esteem |
研究実績の概要 |
研究成果は以下の2点に集約される。 1)コロナ禍における行動変容についてのRCT実験を行った。具体的には、外出自粛を促すためにどの様な政策介入が効率的であるかを調べるため、他人と行動を比較することがどれほど自分の行動を変容させるかという「社会効用」を通じた効果と、影響力のある指導者に諭されることの効果がどれほどあるのかという2点について、ファクトリアルデザインを用いたランダム介入を行い、それぞれの介入における結果を比較した。実験はインターネットのサーベイ実験であり、サンプルは社会代表的になるように構成された約3000人を対象とした。実験を通じて、他人よりも外出行動が積極的であった人に外出抑制効果がありつつ、他人よりも外出が少なかった人に関しては特にバックファイヤー効果は見られなかったこと、また、影響力のある指導者の声に関しては有意な追加効果が見られなかったことが判明した。以上により、メッセージ政策デザインに関する有力な知見がえられた。
2)社会効用に関するself image効果とsocial esteem効果についての識別実験をアメリカ、イギリス、南アフリカ、シンガポール、オーストラリアの5カ国で行った。実験は実施者が開発してきた仮想離散選択型のパラダイムを用い、各国約1000人を対象としたインターネット実験を行った。その結果、5カ国に共通したself image効果とsocial esteem効果の発現パターンが確認された。中でも、これまではプラスに作用すると思われていたsocial esteem効果が一環してマイナスに作用することが判明し、新しい知見となった(具体例には、他人から自分の本来の姿以上に見られると効用が低下する)。今後はこの作用を引き起こすメカニズムを追加実験で同定し、有効な介入政策のデザインに活用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では「社会効用効果を通じた有効な情報介入政策のデザイン」についての研究は最終年度に行う予定であったが、コロナ禍で社会的喫緊課題を優先するように計画を変更しつつ、実行することができた。一方で、当初本年度に行う予定であったself imageとsocial esteemの分離実験についても5カ国で行うことが出来たため、以上の意味で当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
以後の計画は以下の通りである。 上述1)のプロジェクトについては論文化も完了しており、国際査読付き雑誌への掲載を目指す。 上述2)のプロジェクトについては、social esteem効果がマイナスに作用するメカニズムを同定するための追加実験をアメリカで行い、その上で有効な介入政策のデザインに活用する。
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