研究課題/領域番号 |
20H01490
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
陣内 了 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (50765617)
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研究分担者 |
高橋 悠太 一橋大学, 経済研究所, 講師 (10835747)
高山 直樹 一橋大学, 経済研究所, 講師 (10843790)
宇南山 卓 京都大学, 経済研究所, 教授 (20348840)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 資産価格バブル / 金融規制 / 経済成長 / 景気循環 |
研究実績の概要 |
陣内は、研究プロジェクト全体の核となる理論モデルの開発を行った。資産価格バブルのクラウドイン効果とクラウドアウト効果が、経済環境の違いによってどのように影響を受けるのかを明らかにし、結果をまとめた。バブルの発生が期待される場合には、その期待がクラウドアウト効果を持つことも明らかにした。将来のバブル発生を期待することによってもたらされるクラウドアウト効果も加味した上で、資産価格バブルが経済厚生に与える影響を、それが経済政策によってどのように影響されるかという視点とともに分析した。金融市場に摩擦がある場合の、資産価格の決まり方に関する研究成果も論文にした。
高橋と高山は、COVID-19の影響でリサーチアシスタントの確保などに影響を受けた。当初、計画していたデータの収集や電子化の遂行は難しくなったため、データが手に入りにくい歴史研究ではなく、データが比較的入手しやすい1980年以降の日本の資産・地価バブルの発生と崩壊に焦点を当てた分析に焦点を切り替えて研究を行った。さまざまな分析の結果、90年代の実質投資の落ち込みの多くが、不動産投資価格の下落によって説明できることが分かった。当時の不動産価格変動の要因を理解することが今後の課題になる。
宇南山は平成バブル期についてのマクロ的なデータの観察によって、地価・株価の急上昇と急低下によって部門間で大きな移転が起きていたことを確認した。バブル前後を一国全体で見れば影響はキャンセルアウトされるが、バブル前後で家計部門は通算169兆円のキャピタル・ゲインを、企業部門は105兆円のキャピタル・ロスを記録していた。この移転がもたらした影響を分析するのが今後の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の影響でリサーチアシスタントの雇用計画などに影響を受けたが、実行可能で有意義な研究に適宜、計画を修正していくことで、結果としておおむね当初の予定通りの進捗を達成できたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
陣内は、プロジェクトの核となる理論モデルのさらなる精緻化を行う。金融規制の影響を理論的に分析できる説得的な理論モデルを作り、その効果をデータで検証することを目指す。高橋と高山は、日本の平成バブル期の不動産価格の動きや、投資の動きの分析を進める。宇南山は、平成バブル期の部門間の資金の動きや、そのマクロ経済学的な含意についての分析を進める。
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