前年度に実施した家計調査、村落調査および電話調査のデータを用いて、暫定的な分析結果を求めた。その上で、コロナや経済危機の状況が収まったことを確認し、2023年8月にはスリランカを訪問することができた。現地では、暫定的な分析結果をKandy Consulting Groupでのワークショップにて発表し、共同研究者およびフィールド調査の担当者たちから有益なフィードバックを得ることができた。さらにフォローアップ調査として、トリンコマリー県の3村を訪問し、様々な世帯から内戦、コロナ、経済危機の影響と対処方法などについてインタビュー調査をすることができた。 具体的な研究成果としては、紛争が人々の信頼関係に与えた影響に関する論文が、清華大学国際地域研究所主催による研究集会の会議録をまとめた書籍の1章として、中国語で出版された。また、2023年9月には紛争が非紛争地域の子供の健康に与えた影響に関する論文が、3rd Tsinghua Area Studies Forumにて優秀論文賞を獲得した。さらに2024年1月に国際学術雑誌であるWorld Development誌に紛争が子供の教育に与えた長期的影響についての論文を発表することができた。また、2023年8月に現地で行ったワークショップでは新たな調査結果を用いた研究成果として、コロナ禍の悪影響が、紛争で貧困化したタミル人たちにより大きな影響を与えたこと、紛争被害の経験が非認知能力においても長期的に悪影響を与えていること、などを報告した。
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