研究課題/領域番号 |
20H01500
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
稲垣 誠一 国際医療福祉大学, 赤坂心理・医療福祉マネジメント学部, 教授 (30526380)
|
研究分担者 |
山田 篤裕 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (10348857)
高山 憲之 公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構, 研究部, 理事長 (30102940)
村田 忠彦 関西大学, 総合情報学部, 教授 (30296082)
小塩 隆士 一橋大学, 経済研究所, 教授 (50268132)
原田 拓弥 青山学院大学, 理工学部, 助教 (70847201)
中田 光紀 国際医療福祉大学, 医学研究科, 教授 (80333384)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | マイクロシミュレーション / 年金 / 生活保護 / 高齢者雇用 / 合成人口 |
研究実績の概要 |
本研究は、超高齢社会を迎えるわが国において、ライフスタイルが多様化した人々が高齢期の生活を維持していくことができるかどうか、経済政策の面から分析・評価するものである。具体的には、将来の高齢者について、モデル世帯の年金額だけでなく、年金額の分布や家族構成を考慮した所得の分布を示すことによって、年金制度などの社会保障制度や税制の在り方を分析・評価するものである。そのため、ダイナミック・マイクロシミュレーションモデルを構築する。本研究では、①モデルを構築して「分布」の政策シミュレーションを実施し、②このモデルを多くの研究者が広く活用できるよう、国勢調査等の集計データをもとにした合成人口データの作成・公開をすることを目的としている。 本年度は、その1年目として、従前のモデルの機能の強化を図るとともに、最新のデータに基づいた遷移確率(個々人の行動を確率で表したもの)の推定や初期値人口の作成を行って、ベースライン・シミュレーションを実施することを予定しており、政府の令和元年財政検証の結果をモデルに織り込んだ。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大は、人々の雇用や所得、結婚や出産に大きな影響を与えているため、当初の予定に加えて、この影響の分析・評価やモデルの再修正の必要が生じた。そのため、心理学分野の専門家を新たに研究分担者に加えて、個々人の就労への影響を多角的に分析・評価することとした。 新型コロナウイルスの感染拡大の終息はみえておらず、今後どのような影響があり得るかについては、次年度の状況の分析・評価が不可欠であり、また、初期値データのアップデートも避けられない。そのため、次年度において、賃金・雇用への影響を正確に把握するために、ねんきんネット(行政データ)を利用した調査を実施するとともに、新たな分析結果を踏まえて、ベースライン・シミュレーションを再度実施することとしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、モデルのアップグレード、初期値人口と遷移確率のアップデート、ベースライン・シミュレーションを行う予定であった。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大が初期値人口と遷移確率に大きな影響を与えており、データのアップデートには、感染拡大の影響の分析が必要不可欠であった。感染拡大は、人々の結婚行動や出産行動のほか、経済への影響、就業行動、資産形成行動にも影響を与えると想定されるからである。そこで、政府の令和元年財政検証の結果のモデルへの織り込みと並行して、これらの影響の評価・分析を行った。ただし、感染拡大が終息していないため、この分析・評価は中間的なものにとどまり、次年度の状況を踏まえて完了させる予定である。 政策課題(老後資金2000万円問題、氷河期世代の老後問題、高齢シングル女性の貧困化など)に対応するための経済政策(年金制度改正、雇用政策、投資教育など)については、文献調査や定性的な分析を進めている。これらに関し、政策シミュレーションを実施した定量的な分析については、ベースライン・シミュレーションの完成を待って実施するため、その実施方針の検討を進めている。 国勢調査の集計データを基にした合成個票データの作成については、様々なシミュレーションを実施することによって、その妥当性の評価を行っている。次年度以降、ベースライン・シミュレーションとの整合性の評価などを行っていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染拡大の初期値人口と遷移確率への影響の分析・評価の実施、その分析結果を踏まえたデータのアップデートが、当初予想できなかった大きな課題である。また、この感染拡大の影響を緩和するため、終息後の新たな政策提案も行われることが想定される。これらを本研究に取り込んでいくことは必要不可欠であり、研究のボリュームが大きくなることは避けられないが、特に重要なものに絞り込んで研究を進めていく方針である。 また、感染拡大の賃金・雇用への影響を正確に把握するために、次年度において、ねんきんネット(行政データ)を利用した就業形態や賃金の変化に関する詳細な調査を実施する予定である。この調査結果は、モデルに織り込んでいく必要があるが、新たに研究分担者として参加を求めた心理学分野の専門家を含め、感染拡大の分析・評価には、研究チーム総力を挙げて実施する予定である。
|