研究課題/領域番号 |
20H01515
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福田 祐一 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (00243147)
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研究分担者 |
山根 明子 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 准教授 (60580173)
坂本 淳 神戸国際大学, 経済学部, 講師 (90845025)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アノマリー |
研究実績の概要 |
5ファクターモデルを実証研究するためには、分析対象となる株式ポートフォリオ・リターンと5ファクターを計算することが必要となる。5ファクターの中で伝統的に説明力が高いと考えられてきた株価純資産倍率に関するファクターの説明力が、最近、低下しているという研究が行われている。バランスシートの資産額と負債額の差で与えられる純資産価値は、企業がこれまで積み上げてきた純利益の蓄積とみなされ、時価総額の重要な構成要素である将来配当額の原資となる将来純利益と関連している可能性が高い。ところが、最近、人的資本や特許などの評価が容易ではない資産が増加するとともに、これらの純利益への貢献度が高まっており、貸借対照表から得られる純資産価値と将来の稼得能力の乖離が拡大している可能性が高い。令和3年度は、この可能性を調べるためのデータ整理を行った。また、最近の研究では、経済状況、政治状況、政策対応等の不確実性指標と5ファクターの関係が議論されている。5ファクターと不確実性指標の関係に関する文献渉猟により、不確実性指標の影響を大きく受ける企業は、投資家が情報収集活動を活発化させ、正確な企業情報を得ることで、不確実性指標の影響を低下させようとするインセンティブが働く可能性が高いことが明らかになった。先行研究では、理論モデルに基づき、投資家が正確な情報を得ることで厚生の改善を図ることができる程度を示す指標としてラーニング・インデックスを開発し、米国のデータを用いて、この指標の有効性を検証している。令和3年度は、この先行研究を参考に、日本におけるラーニング・インデックスを算出するためのデータ整理も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度においては、令和2年度に計画していた海外での学会に参加し、関連分野に関する最新の研究動向を調査することはできなかったものの、国内において文献渉猟を行い、オンライン形式の研究打ち合わせを開催することで、最新の研究動向を把握することができ、今後の研究の方向性について確認することができた。さらに、今後、実証研究を推進していくための準備として、必要となるデータを購入し、それらを用いてデータ整理も行った。今後は、データを活用して、実証分析を行っていくことが必要となるが、延長した研究期間において対応可能であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策としては、令和3年度に整理したデータを活用し、実証分析を進めることである。5ファクターの中で伝統的に説明力が高いと考えられてきた株価純資産倍率に関するファクターの説明力が、最近低下しているという研究では、企業の純資産価値が、その企業の将来の稼得能力を反映しにくくなっていることが、主な理由として考えられている。このため、令和3年度に整理した日本の企業および株式データを用いて、同様の理由が日本のデータでも確認できるのかどうかを分析したいと考えている。また、5ファクターと経済状況、政治状況、政策対応等の不確実性指標の関係に関する文献渉猟により、不確実性指標の影響と投資家が行う情報収集活動の関係が明らかにされている。この文献では、投資家が正確な情報を得ることで厚生の改善を図ることができる程度を示す指標としてラーニング・インデックスを開発し、米国のデータを用いて、この指標の有効性が検証されている。このことを踏まて、令和4年度には、令和3年度に整理した日本の株式データを用いて、ラーニング・インデックスを計算し、この指標の有効性を実証的に明らかにしたいと考えている。
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