研究課題/領域番号 |
20H01521
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 尚史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60262086)
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研究分担者 |
林 采成 立教大学, 経済学部, 教授 (40760228)
澤井 実 南山大学, 経営学部, 研究員 (90162536)
ばん澤 歩 大阪大学, 大学院経済学研究科, 教授 (90238238)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 帝国圏鉄道 / 日本国鉄 / 南満州鉄道 / 朝鮮総督府鉄道 / 台湾総督府鉄道 / 樺太庁鉄道 |
研究実績の概要 |
2021年度は、コロナ禍によって新たな海外資料調査が強く制約され、その大半を次年度に繰り越さざるを得なかった。そのため、資料調査はオンライン上で公開されている資料を中心に実施することになった。また研究会メンバーを中心に開催する予定であった国際会議も延期せざるを得なかった。このような厳しい研究環境にもかかわらず、研究会メンバーはそれぞれに精力的な研究活動を続け、以下のような研究成果を挙げることができた。 研究代表者である中村は、9月に世界経営史会議で、アメリカから日本帝国圏への機関車輸出について報告し、11月にはHarvard Yenching Instituteで日本の機関車技術発展に関する報告を行うなど、日本鉄道史に関する研究成果の英語での発信に注力した。あわせて英文図書の執筆にも注力した。 研究分担者の沢井は、①日本国鉄の幹部として活躍した岸本熊太郎の事績を検討し、国鉄職員にとって留学経験とは何であったのかを考察し、②1930・31年のソ連鉄道工場への日本国鉄の鉄道技術者派遣問題を取り上げて、ソ連鉄道関係者の来日時の視察内容の検討と、訪ソした日本人技術者はソ連の鉄道工場での指導内容と成果を検討した。 同じく林は、①満鉄の優れた鉄道運営システムの伝播プロセスを考察し、その起点として第一次世界大戦期における中国山東半島への満鉄進出を検討した、②植民地朝鮮の私鉄事業や軌道事業の推計作業を通じて総体的事業の展開を検証し、また多獅島鉄道などといった個別会社に関する事例分析を進めた。 同じくばん澤は、①20世紀の「帝国」的拡張の端的なケースであるナチス・ドイツを主な研究対象とし、ナチ期を対象とする経済史研究の現況を整理し、②日本帝国時代の鉄道省在ベルリン事務所を対象にその制度的概要並びに人員構成、発言等を調査し、対独関係ならびに日独比較のための基礎的作業をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、コロナ禍の影響で、予定していた海外資料調査や国際会議が実施できず、研究活動に影響が生じた。そのため、海外調査旅費を中心に次年度に繰り越しを行わざるを得ず、研究の進捗に若干の遅れが生じた。しかし、翌2022年度に繰り越した海外資料調査を実施し、遅れを挽回することができた。 また、定例の研究会については、オンラインによって実施するなど、代替的な手段を用いて研究活動を維持した結果、研究実績の面では予想以上の成果を得ることができた。 そのため、トータルに見れば、研究がおおむね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度にコロナ禍の影響で実施できなかった海外資料調査を、繰り越した予算を用いて2022年度に精力的に実施し、資料の収集と分析をおこなう。同様にコロナ禍で延期した国際会議を開催し、また国際学会等に積極的に参加することで、研究成果の中間的なまとめと、国際発信をおこないたい。
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