研究課題/領域番号 |
20H01552
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
藤村 和宏 香川大学, 経済学部, 教授 (60229036)
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研究分担者 |
高室 裕史 甲南大学, 経営学部, 教授 (30368592)
小林 哲 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (60225521)
磯田 友里子 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 講師 (40822200)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 医療サービス / 教育サービス / 便益遅延性 / 価値観便益 / 感情的便益 / 機能的便益 / 顧客参加 / 顧客満足 |
研究実績の概要 |
医療サービスの機能的便益(身体的健康度の回復)の享受において遅延性が生じている期間に、患者はどのように顧客満足を形成し、また協働者として治療に参加(顧客参加)するのかにかかわるモデルを構築するとともに、過年度に患者を対象と実施した調査の結果を詳細に分析し、その検証を行った。その結果、機能的便益の享受に遅延性が生じている期間においても、病気との付き合い方や人生観に対する認識をポジティブに変化させるような価値観便益が享受されることで、さらに身体的健康度の低下が導く不安感を低減させるような感情的便益が享受されることで、患者は顧客満足を形成し、顧客参加も積極的に行われることが明らかになった。 また、教育サービスの機能的便益(望むスキルや知識の向上)の享受において遅延性が生じている期間に、学習者の学習行動を維持あるいは促進する要因にかかわるモデルの構築を行うとともに、その検証を経営人材育成のためのツールとして開発されたマネジメント・ゲーム(MG)の学習者(参加者)を対象に実施した調査の結果を用いて行った。その結果、MGは企業の人材育成における遅延性を低減するものであるが、MGの教育効果についても遅延性が存在することが明らかになった。また、学習プロセスにおいて喚起される不快感は学習への積極的な参加を抑制する傾向があるが、参加による学びの多さを認識するにつれて積極的な参加が促されること、さらに、目的を持っての参加は目標とする認知能力の向上を促すだけでなく、その参加過程において他の参加者と一緒に行う活動が非認知能力の向上を導くことも明らかになった。 さらに、本研究では、祭りも地域に必要な人材育成ツールとして見なしていることから、各地の祭りに関する資料の収集を行った。ただし、コロナ禍で祭りが中止になったことから、祭りの担い手や観客に対するインタビュー調査は実施できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教育サービスは、「目標の有無」と「期限の有無」という2次元を用いて分類し、さらに目標を「特定的/専門的能力の向上」と「汎用的能力 の向上」に分けることで、5つのカテゴリーに分類することができるが、本研究では、「目標なし」かつ「期限なし」のカテゴリーを除く、4つのカテゴリーに属する教育サービスを対象としている。具体的には、「特定的/専門的能力の向上」かつ「期限あり」に属する専門学校、「特定的/専門的能力の向上」かつ「期限なし」に属するマ ネジメント・ゲーム(MG)と専門職労働の職務遂行、「汎用的能力の向上」かつ「期限あり」に属する大学、そして「汎用的能力の向上」かつ「期限なし」に属する祭りを研究対象としている。 令和2年度は、祭りについては、コロナ禍の影響で開催されたかったことから、インタビュー調査を実施できなかったが、他のものについては調査を実施できたことから、おおむね順調に進んでると評価した。特に専門学校を対象とする研究では、3年制の医療系専門学校の学生を対象に入学から卒業まで継続的に調査を行うことで、機能的便益、感情的便益、および価値観的便益の享受における変化が顧客満足や顧客参加(学習行動)に及ぼす影響にかかわるモデルを検証するためのデータの収集を行っているが、2018年度入学者の入学から卒業までのデータを得ることができた。2019年度と2020年度の入学者に対しても同様な調査を実施できている また、マネジメント・ゲーム(MG)の参加者を対象としても、継続的に調査を行うことが可能になった。具体的には、社内でMGを実施している2社の協力を得ることで、社員の方々にMGに参加するごとに質問に回答してもらい、参加回数の増加が機能的便益や感情的便益、価値観的便益の享受に及ぼす影響や、それらの享受が顧客満足や顧客参加に及ぼする影響を検証するためのデータを収集できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の4点を中心に研究を進めていきたいと考えている。 1)専門学校の学生を対象に、入学から卒業までの期間に定期的に実施している調査を継続しながら、時系列で得られる調査結果を用いることで、便益享受や学習行動、顧客満足の変化を継続的に把握する。この調査結果を用いることで、学習行動、および3つの便益の享受にかかわるモデルの検証と精緻化を行う。2)医療系以外の専門学校にも調査協力の依頼を行い、医療系専門学校で実施中の調査と同様な調査を実施することで、専門学校の違いによるモデルの違いを考察する。3)マネジメント・ゲームの参加者を対象に継続的に実施している調査の結果を分析することで、「特定的/専門的能力の向上」かつ「期限なし」に属する教育サービスの学習行動と学習成果に関するモデルの検証と精緻化を行う。4)教育サービスとしての祭りの効果をモデル化するために必要な資料や情報を収集するために、祭りの担い手と観客に対してインタビュー調査と観察調査を実施する。
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