今日的課題に対応する原価企画のあり方に関する研究

2021 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 20H01556
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 小沢 浩 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (40303581)
• 研究分担者: 諸藤 裕美 立教大学, 経済学部, 教授 (20335574) ; 木村 麻子 関西大学, 商学部, 教授 (30389233) ; 近藤 大輔 立正大学, 経営学部, 准教授 (30712533) ; 中川 優 同志社大学, 商学部, 教授 (40217683) ; 片岡 洋人 明治大学, 会計専門職研究科, 専任教授 (40381024) ; 藤野 雅史 日本大学, 経済学部, 教授 (60361862) ; 天王寺谷 達将 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (60709773) ; 井上 慶太 東京経済大学, 経営学部, 講師 (70825158) ; 浅石 梨沙 西武文理大学, サービス経営学部, 講師 (90844605) ; セルメス鈴木 寛之 (鈴木寛之) 京都大学, 経済学研究科, 講師 (30916888)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: 原価企画 / 環境経営 / サービタイゼーション

研究実績の概要

本研究は、製品の開発段階で製品原価を作り込む原価企画活動を対象とした研究であり、「国際化」「環境配慮」や「製造業のサービス化（サービタイゼーション）」という製造業を取り巻く環境の変化を受けて、製品開発段階で原価低減に取り組む「原価企画」の変質を調査することが目的であった。当初は、製品開発拠点の国際化もテーマに含めており、また、インタビュー等を主要なアプローチとして、企業の実態調査を行う計画であったが、コロナ禍により外出に制限が加えられたことから、計画を大幅に変更して、国際化をテーマから除外し、質問票調査と文献レビューのみによって実施することにした。
環境配慮については、2020年に「製造業における環境経営に関する質問票調査」を行い、2021年10月にその報告書を『調査と資料』第125号（名古屋大学大学院経済学研究科附属国際経済政策研究センター）として公刊した。この調査より、環境への配慮を問う質問のうち、販売価格・販売数量の上昇をもたらしている項目、また、製造原価・一般管理費の上昇をもたらしている項目などが明らかになった。今後、このデータの分析を進めることで、さらなる知見が得られる見通しである。
サービタイゼーションについては、2021年度は、先行研究の検討を通じて、サービタイゼーション戦略における原価企画活動を支援するために必要な研究課題を明らかにして、整理した。具体的には、サービタイゼーション戦略におけるサービス・パラドックスに関する諸問題、サービス業における品質機能展開とVEとの関係性、PSSの類型化とライフサイクルコスティング、および英国防衛調達の事例からみた原価企画の意義について検討した。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

20年度以降、コロナ禍のために研究計画を大幅に変更し、実態調査を質問票調査に切り替えた。このうち、21年度は、サービタイゼーションに関する質問票調査を行う予定であった。しかし、急遽、質問票調査に切り替えたことから質問票の作成に時間がかかってしまったこと、および、おそらく同様の理由によって質問票調査の需要が多かったことが理由と思われるが、業者が依頼を受けられないとのことで、21年度中の調査を実施・完了ができなかった。そのため、サービタイゼーションに関する調査を22年度に持ち越すこととなった。なお、環境配慮に関する研究については、20年度中の調査結果を集計して公刊することができた。

今後の研究の推進方策

22年度は、21年度に実施できなかったサービタイゼーション関連の質問票調査を実施する。20年度の環境配慮に関する調査は企業を対象として行ったが、22年度の調査は、環境配慮とサービタイゼーションに対する消費者の意識調査を行う。具体的には、製品として自動車を取り上げ、回答者の属性、社会貢献意識、製品・サービスに対するこだわりや意識とともに、自動車を購入、または、サービス利用を決定する際に重視する項目などを質問する。これによって、BtoCの製品やサービスの開発において重視すべき項目を明らかにする。

研究成果

• [雑誌論文] 企業理念に直結したサステナビリティ配慮型製品開発：三菱ケミカル株式会社の実践を通じた探索的研究 (2022)
  • 著者名/発表者名: 天王寺谷達将・諸藤裕美・中嶌道靖・鈴木寛之・木村麻子
  • 雑誌名: 管理会計学 巻: 30(1) ページ: 105-121
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] サービタイゼーションにおける契約と原価企画：防衛調達におけるパフォーマンス・ベースト契約を例として (2021)
  • 著者名/発表者名: 井上慶太・諸藤裕美・中川優・森光高大
  • 雑誌名: 日本管理会計学会 スタディ・グループ「原価企画の今日的課題と対応」最終報告書 巻: 0 ページ: 71-83
• [雑誌論文] サービタイゼーション戦略における原価企画とLCCの課題 (2021)
  • 著者名/発表者名: 片岡洋人・浅石梨沙
  • 雑誌名: 日本管理会計学会 スタディ・グループ「原価企画の今日的課題と対応」最終報告書 巻: 1 ページ: 53-70
• [雑誌論文] 空港に期待する持続可能な地域振興ネットワークの構築と情報開示 (2021)
  • 著者名/発表者名: 木村麻子
  • 雑誌名: ていくほふ 巻: 164 ページ: 40-47
• [雑誌論文] トピックモデリングを用いたサステナビリティ開示の傾向分析 (2021)
  • 著者名/発表者名: 北田皓嗣・木村麻子
  • 雑誌名: 日本会計研究学会スタディグループ『AI技術の活用によるESG情報の評価に関する研究（中間報告書） 巻: 0 ページ: 77-108
• [雑誌論文] サービタイゼーション戦略における原価企画研究 : PSSの概念整理とTLCの分析視角 (2021)
  • 著者名/発表者名: 片岡洋人・浅石梨沙
  • 雑誌名: 會計 巻: 20(5) ページ: 534-548
• [雑誌論文] 製造業における環境経営に関する質問票調査報告 (2021)
  • 著者名/発表者名: 小沢 浩・木村麻子・鈴木寛之・天王寺谷達将・藤野雅史
  • 雑誌名: 調査と資料 巻: 125 ページ: 1-87
  • DOI: 10.18999/ecores.125
  • オープンアクセス
• [学会発表] サービタイゼーションにおける製品とサービスの束の収益性管理～製造業とサービス業の原価企画比較の観点から～ (2021)
  • 著者名/発表者名: 立正大学・近藤大輔，立教大学・諸藤裕美
  • 学会等名: 日本管理会計学会
• [学会発表] サービタイゼーションにおける契約と原価企画：防衛調達におけるパフォーマンス・ベースト契約の例 (2021)
  • 著者名/発表者名: 井上慶太・諸藤裕美・中川優・森光高大
  • 学会等名: 日本管理会計学会
• [学会発表] サービタイゼーション戦略における原価企画研究：TLCの概念整理を中心に (2021)
  • 著者名/発表者名: 片岡洋人・浅石梨沙
  • 学会等名: 日本管理会計学会
• [学会発表] 個人のの資質が業績評価に及ぼす影響：Sustainable Balanced Scorecardsの利用 (2021)
  • 著者名/発表者名: 北田皓嗣・北田智久・木村麻子
  • 学会等名: 日本管理会計学会2021年度第3回フォーラム