研究課題/領域番号 |
20H01565
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
室井 研二 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (20310013)
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研究分担者 |
黒田 由彦 椙山女学園大学, 文化情報学部, 教授 (30170137)
高橋 誠 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30222087)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 震災復興 / 人口減少 / アクセシビリティ / 復興格差 |
研究実績の概要 |
本研究は、宮城県の被災地の中で震災後の人口減少率が突出して高い山元町、南三陸町、女川町を震災復興条件不利地域と位置づけ、人口減少の要因や復興の地域差を解明することを目的とするものである。研究実施計画に沿って2020年度は以下のことを実施した。 (1)資料分析。土地利用の歴史的変遷に関する資料の収集と分析、国調の小地域統計の収集と整理、町議会議事録の解読による震災後の政策的対応や問題点の整理等を行った。 (2)調査対象地の行政区長や商工会等を対象としたヒアリング調査。山元町(および亘理町)では特に震災後の農業の変化について調査し、農業の大規模化、効率化が進展した一方で、農地の共同管理(草刈りや水路の泥さらい)や生活互助慣行の衰退が進行していること、土地利用の変化に伴い防災面での脆弱性(海岸防災林の管理体制の不安定化、防災集団移転地の水害等)が生じていること等について情報を得た。南三陸町や女川町では特に震災後のアクセシビリティの変化や公共交通に関わる諸問題を中心に聞き取りを行った。調査はまだ初期段階であるが、人口減少の要因や震災対応に関する歌津地区と志津川地区の地域差(南三陸町)、中心部と半島部の地域差(女川町)に着目して今後調査を深めていきたいと考えている。 (3)研究成果の発表。上記調査の成果を地域社会学会、日本社会学会で報告するとともに、県南平野部の復興過程を仙台都市圏との関わりを視野に入れて分析した論文(「仙台都市圏における震災復興─アーバンフリンジ(周辺地域)の動向を中心に─」)、三陸漁村地区の災害文化や震災後の防災の変化をテーマとした論文(「震災復興過程における防災─東日本大震災三陸津波被災地を中心に─」)を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は震災復興に関する理論的研究や資料分析、2021年度実施予定の質問紙調査の準備作業を兼ねたフィールド調査を行う計画であった。このうちフィールド調査に関しては新型コロナ感染症の影響で見通しが不透明な時期が多かったが、小康状態の時期に3回現地調査を実施することができた。研究分担者、研究協力者と研究の進捗状況に関する情報交換や今後の検討課題に関する会合も設けることができた。また、現時点での研究成果を論文や報告書にまとめ、今後の調査の足掛かりをつくることができた。 2021年度に入ってからは、今年度実施予定の質問紙調査の調査票の作成に取組んでおり、夏休み前には完成させる予定である。現在、感染症の影響でフィールド調査は実施できない状況が続いているが、それ以外に関しては、研究は順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の最大の目標はサーベイ調査を実施することである。 まず、研究分担者と共同で上半期に調査票を完成させる。また、調査対象地である宮城県山元町、女川町、南三陸町の自治体内の調査対象区域や調査票配布数について検討、決定する。なお、研究分担者として関与している基盤Aの研究でも今年度に同様のサーベイ調査を実施する予定であるため、双方の調査票の内容が上手く関連するよう綿密に調整する。 夏季休暇中に現地を訪れ、調査対象者のサンプリングを行う。サンプリングは自治体と相談の上、住民基本台帳か選挙人台帳で行う。調査は郵送法で実施する予定である。調査票の封詰め作業等については学生に補助を依頼し、10月中に発送業務を終える。調査票は年内に回収し、PCへの入力は業者に依頼する。 調査の実施が予定通り進めば、年度末までに単純集計結果を簡易報告書にまとめたい。 また、新型コロナ感染症の状況が改善すれば現地調査も再開する。現地調査はこれまで県南エリアを重点的に行ってきたため、三陸(女川、南三陸)の復興状況、復興課題に関する情報収集に力を入れたい。
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